Story最高の一皿のための、最良の空間づくりを。

ビストロ赤沢伊豆高原

クライアント:株式会社ディーエイチシー 様

  • 飲食店・食物飯店
  • デザイン・設計
  • 制作・施工
  • 世界観の構築
  • 中部
Overview
静岡県伊豆高原のスパリゾート「赤沢温泉郷」にある和食居酒屋をビストロにリニューアルする。施設唯一の洋食。木造小屋組の和風店舗は、いかにして自然豊かな伊豆高原の情景に溶け込む洋風レストランへと生まれ変わったのか。リゾート施設のオーナーであるディーエイチシー様のスタッフ。新店舗オープンへ情熱をそそぐシェフ。経験豊富な施工現場の職人たち……。企業の枠を超えた、一人ひとりの情熱がプロジェクトを推し進めていく。
Index

自然豊かな伊豆高原の情景を思い描く。

2019年初頭。スペースはコンペの最終プレゼンターとしてプレゼンを行った。目の前には「赤沢温泉郷」の支配人をはじめ、事業責任者、建設の担当者、新たなビストロのために華麗な経験を持つ道谷シェフも参加していた。

澤:提案までリサーチを重ね、美と健康、海にこだわったディーエイチシー様のリゾートコンセプトを膨らませ、お店の未来まで見据えた提案が評価いただけたようでした。

ディーエイチシー様が求めたのは、宿泊客はもちろん、ゆくゆくは地元の方々にも様々なシーンで幅広く利用してもらえるお店。そこから伊豆の新鮮な海の幸を活かしながら、土地の魅力を体感できる「情景を描くレストラン」というコンセプトができあがった。

澤 匠 / 大阪第3事業部 事業部長
橋爪 宏輔 / 大阪第3事業部
北嶋 秀紀 / 大阪第3事業部

橋爪:赤沢温泉郷に宿泊すると、穏やかな自然の美しさを感じました。その情景を思い描き、心が安らぐような居場所として、特別な日に利用される、長く愛されるお店であってほしいと考えました。

リニューアルのポイントの1つとなったのが、和風の建築物をこのリゾートにあるべき洋の空間にどう見せていくか。

北嶋:今回の木造小屋組は、構造的に壊してみないとわからないところも多く、ある意味、新築よりも難しいものでした。

現地を訪れると、窓からは立派な庭園が見え、綺麗な自然光が天井の高い店内に入ってきていた。

橋爪:この庭までの気持ちのいい抜け感をお客様に瞬間的に伝えようと思った時、何か1つ記憶に残る軸が欲しいと考え、現状の梁も活かせる光柱(ひかりばしら)のアイディアにたどり着きました。

そして、ビストロ赤沢伊豆高原のリニューアルプロジェクトはスタートした。

シェフの熱意を超える空間を。

リニューアルの工事が始まると、毎日のように現場を訪れる道谷シェフと議論を重ねていった。

北嶋:最初は解体の工事なのに、シェフは埃まみれの現場に毎日のようにいらっしゃいました。職人とも気軽に会話して、いつしか現場のムードメーカーになっていて、何度も足を運ばれるシェフの姿に、新たなレストランへの熱意をひしひしと感じて、私たちの仕事にも自然と熱がこもっていきました。

澤:通常は物件のオーナーと直接やりとりすることが多いので、私たち全員がシェフと直に、しかも密に会話するというのは珍しいです。そのおかげで、ビストロとしてどう料理やワインを提供したいのかといったシェフの具体的な想いを直接聞けたことは、プロジェクトを進めるうえでとても大きな意味を持ちましたね。

初田:シェフは特に厨房のイメージをかなり細かく持たれていました。また運営に関しても、スタッフの導線、通路の幅、席の間隔などにもこだわりを持たれていて。シェフの期待を超えようと、私たちもリサーチやデザインにいつも以上に力が入っていった気がします。

ビストロ赤沢伊豆高原にある流線型のフォルムが特徴的な家具は、すべてオリジナルだ。製作したのは、外部パートナーの株式会社アルク。

初田:2時間のコース料理を食べる時、テーブルの高さや椅子の幅はどれくらいが一番心地いいのか。フォルムや素材は何が適切か、アルクさんは、そんなディティールに対して豊富な情報と鋭い感性を持っていました。デザインコンセプトを伝えると、素晴らしい提案を返してくださいました。

自然をベースにしたデザインコンセプトを受けて、オリジナル家具は大地や海といったアースカラーをバランスよく取り入れたコーディネートになっている。また家具以外にも、昼夜で調整できる照明の演出、手作り銅板の入口の扉など、様々な外部パートナーと協力しながら、リニューアルは進んでいった。

初田 有希 / 大阪第3事業部
株式会社アルク(ショールーム内)

突然の方向転換。石窯焼きの肉ビストロへ。

リニューアルが順調に進む中、道谷シェフから大きな方向転換の連絡が入った。店舗のコンセプトを、石窯で焼く肉料理をメインとしながら一緒に魚介も楽しめる、肉ビストロへ変更するというものだった。

初田:シェフには、「魚介のレストランであふれている伊豆で、地元の人たちに来ていただくために、あえて肉料理に特化した店をやりたい」という想いがありました。最初は驚きましたが、健康にいいと言われる肉料理はディーエイチシー様の理念にも合っています。その方向転換は納得できました。

橋爪:石窯と聞いた時、これはお店の象徴になると感じました。石窯を厨房の核として、匂いや音といった五感を刺激しながら、ライブ感を大胆に演出できると思ったんです。

さらに道谷シェフは、フランスでの修業時代、お客様と会話をすることで食にはないスパイスを感じてもらえるということを教えられたという。そこで厨房の壁を取り払い「カウンターキッチン」にすることで、シェフと会話を楽しみながら、お肉を味わえる8席のカウンター席が生まれた。

北嶋:シェフが初めて石窯の入った厨房を見られた時、ものすごく喜んでいらっしゃって、その姿に私たちも嬉しくなりましたね。

橋爪:実は以前の居酒屋の時は壁があって、入口から庭が見えませんでした。そこで中央の壁を削ぎ落とし、入口から庭まで見通せ、右手のオープンキッチンと石窯も見えるようにしました。空間と料理が一体となる。すべては美味しい一皿に繋がっているのです。

デザイン、施工、料理。
それぞれのプロの想いが、1つになる。

植木:このチーム編成での仕事は初めてでしたが、道谷シェフやディーエイチシーの方々の熱意に応えたい、このプロジェクトを絶対に成功させたいという想いが私たちを1つにしたと思います。

北嶋:ディーエイチシー様は大きな会社ですが、今回は会社会社という枠組みを超えて、人と人という印象が強かったです。それは社内でも同じで、初田や橋爪のデザインに対する熱意を強く感じました。ならばと、こちらも施工のプロとして、妥協せずぶつかり合うことで高め合えたと思います。

植木 功介 / 大阪第3事業部

橋爪:設計デザインを担う立場と現場を取り仕切る施工という立場で、プロジェクトで担う分野は異なります。でも、あえて言葉にしなくてもちゃんと伝わるチームでした。

植木:デザインや企画の想いを現実的に形にするのが、施工の私たちです。ただ単に意匠だけつくるのなら、誰にでもできます。私たちが見ているのは、見えない部分。仕上げの下は、どんな補強なのか。今ではなく、数年後どうなるのかです。

北嶋:改築ですから、想定と違う部分がどうしても出てきます。その時にどう強度を保ちながら、理想とするデザインに持っていくか。その調整が一番大変でしたね。

植木:建材を切った断面がどうなっていくのか。その知識までなければ、関わってはいけない領域というものがあります。今回のプロジェクトがまさにそうでした。上辺だけではない、末永くあり続けるデザインであり、そのための施工なのです。

初田:最終的なゴールは同じ。そこを共有できていたからこそ、コンセプトの変更があっても、スケジュール通りオープンまでたどり着くことができたのだと思います。

2019年秋、ビストロ赤沢伊豆高原はオープンを迎えた。スタートは上々。橋爪の携帯には、道谷シェフから「今日も満席です!」と喜びの声が届く。そんな声が直接、彼らに届くのも、このプロジェクトならではかもしれない。

澤:今回のビストロ赤沢伊豆高原は、デザイン、施工、料理人、それぞれのプロフェッショナルが同じ方向を向いて突き進んだことで、最高の料理を届けるための空間をつくりあげることができました。ここから、この赤沢温泉郷というリゾート施設がどう変わっていくのか。ディーエイチシー様と一緒に歩みながら考えていきたいと思っています。

Movie

Project Member

  • 澤 匠大阪第3事業部 事業部長
    本プロジェクトにおける役割:
    ディレクション
  • 初田 有希大阪第3事業部
    本プロジェクトにおける役割:
    デザイン・設計
  • 橋爪 宏輔大阪第3事業部
    本プロジェクトにおける役割:
    プランニング・デザイン
  • 植木 功介大阪第3事業部
    本プロジェクトにおける役割:
    制作ディレクション
  • 北嶋 秀紀大阪第3事業部
    本プロジェクトにおける役割:
    制作
  • 尾﨑 伸司 株式会社アルク
    本プロジェクトにおける役割:
    家具製作、製作アドバイス

業務範囲:ディレクション / プランニング / デザイン / 設計 / 制作(※肩書きは2019年10月取材時のものです)