Storyセノバ保育園

クライアント:静鉄プロパティマネジメント株式会社 様

  • サービス空間・パブリック空間
  • デザイン・設計
  • 制作・施工
  • 体験価値のデザイン
  • ES向上
  • 中部

働くママのために、
働くママがつくった保育園。

Overview

女性の活躍推進が、叫ばれるようになって久しい。女性が安心して長く働ける環境の整備に、各社が試行錯誤する中、新たな試みをスタートさせた複合商業施設がある。静岡鉄道・新静岡駅に直結する「新静岡セノバ」だ。アパレルショップや飲食店などのテナントで働くスタッフには、女性が多い。だが、仕事と子育ての両立に悩み、結婚や出産後に現場を離れるスタッフが、少なくなかった。慢性的なスタッフ不足に頭を抱えていた静鉄プロパティマネジメント株式会社様が、打開策として考えたのが保育園の設置だった。

Index

女性が安心して
長く働ける環境をつくるために

渡辺:「女性スタッフが安心して長く働けるようにと、スタッフのための保育所、セノバ保育園をつくろうということで、長年パートナー企業として、リーシングや内装工事に関わってきたスペースに、お声がけを頂きました」

渡辺:「私たちに期待をしていただいたのは、商業施設はもちろんのこと、さまざまな物件の内装を手がけてきた実績があったから。また、私も岩砂も、実体験として保育所を利用しているので、ユーザー視点で設計することができました」

スペースには、女性がワークライフバランスを大切にしながら働ける専門部隊がある。在籍する10名近くのスタッフ全員が女性。いずれも結婚や出産を経験し、家庭と仕事を両立しながら活躍するメンバーだ。部を率いる渡辺自身、一児を育てながら長年キャリアを築いてきた経験がある。設計者として本プロジェクトに参加した岩砂も、保育園に子供を送り迎えしながら働く二児の母だった。

デザインは、どこまでも母親目線

  • 渡辺 千賀/設計
  • 岩砂 夕希/設計

岩砂:「子供を育てているからこそ、できることがあるんじゃないかと復職してからずっと思っていたのですが、ここまで母親目線を存分に活かせる物件に出会えたのは、すごく恵まれていたと思いますね」

事実、保育園の設計には随所に、設計者の母親目線が発揮されている。

渡辺:「打ち合わせの時に、シーンを思い浮かべることができるんですよね。トイレをどう設計しようか、と考える時に、オムツを持ってくるお母さんがいるから、そのオムツを置いておく場所がいるだろうとか、子供たちは食べこぼしが多いから、床はこうあるべきだろうとか。靴を脱いであがるところは、子供がへりに座るだろうから、同時に並んだ時も沢山の子供が一度に座れるように、あえてウェーブをかけたり」

岩砂:「壁やパーテーションに描かれたイラストは、自分の子供に見せて、可愛いねと言ってもらったものを、実際に採用していたりします(笑)」

エントランスに入るとすぐ目に飛び込んでくるシンボルツリー。その周りを彩る楽しげなイラストは、すべて岩砂の手書きによるものだ。

岩砂:「子供を預けるお母さんたちは、新静岡セノバさんで働かれているスタッフの方になるので、感度の高い方たち。そんなスタッフの方が見たときに、気分が上がるような素敵な保育園である必要があると思ったのです。子供目線だけを意識するのではなく、大人にも喜んでもらえるデザインは意識しました」

  • 渡辺 千賀/設計
  • 岩砂 夕希/設計

子を想う、アイデアの数々

セノバ保育園の見どころの一つが、大きな窓から自然光が入る「陽だまり広場」だ。「陽だまり」というネーミングには、屋内の保育園で過ごす子供達に、少しでも自然を感じて欲しいという設計者の願いが込められている。

岩砂:「園庭のない保育園になるので、内にこもってしまうイメージを払拭し、自然を感じられる場所をつくろうと考えたのです」

「陽だまり広場」に面して、保育室とほふく室、一番奥に乳児室と3つのエリアに分かれている。このエリアを区切るパーテーションにも、さりげない工夫が光る。

渡辺:「月齢によってエリアが分かれるのですが、人数にあわせて仕切りを動かせるような設計にしています。その年々で、ご利用になるお子さんの数に、臨機応変に対応できるように工夫しました」

園内でも、特にこだわったのは、保育室の中にあるすべり台だ。セノバ保育園ができる以前は、スポーツクラブとして利用されていたため、屋内にプールが設置されていた。

渡辺:「プールがあったところの高低差をうまく活かして、すべり台を設置しています。運動場代わりになる、全天候型の遊び場として、ロッククライミングができるような壁もつくりました」

子供が楽しく遊べる場所にするためには、安全面の考慮も不可欠だ。

岩砂:「自分の子供と同じように、遊んでいるときにちょっとくらい怪我をしても大丈夫、という感覚ではいけない。お母さんが安心して、お子さんを預けられる場所であるために、法規上のルールに則って、安全面には細心の注意を払って設計をしました」

母だから生まれる視点がある

2018年4月、セノバ保育園は無事にオープンを迎えた。レセプションには多くの関係者が詰めかけ、オープンの時点で9名の入園が決定。女性の活躍推進の施策の一つとして、他の複合商業施設からも注目が集まっている。

渡辺:「もともとの目的が、保育園をつくることで、女性の働きやすい環境を整え、新静岡セノバさんのスタッフ不足に貢献する、というところだったのですが、オープンの時点で9名の方に入園していただくことができたというのは、まずは目標を達成できたのかなと思っています」

岩砂:「保育園で過ごす時間が楽しくて、子どもたちが、なかなか帰りたがらない、という話も聞きました。そういう声を聞くと本当に良かったな、と思いますね」

女性の活躍支援のニーズは、今後も引き続き高まっていくだろうと、渡辺は語る。

渡辺:「社会全体のニーズとして、女性が長く働きやすい環境作りは、今後も増えていくことと思います。そういった際に、私たちのノウハウを生かしたご提案ができれば、こんなに嬉しいことはありません」

女性だからこそ、提案できるデザイン。母だからこそ、生まれる視点やアイデアがある。渡辺は、こうも続ける。

渡辺:「女性に好まれるものは、どんな分野においてもキーワードの一つになると思います。そういった意味で、女性の設計者が多く活躍するスペースであれば、自分たちの経験値を活かせるシーンが、まだまだあるはず。今後も幅広い分野で、少しでもお役に立てたらと思っています」

Project Member

  • 渡辺 千賀名古屋本部

    本プロジェクトにおける役割:
    設計

  • 岩砂 夕希名古屋本部

    本プロジェクトにおける役割:
    設計

業務範囲:設計/施工

(※肩書きおよび所属は2018年6月時点のものです)