StoryGLION ARENA KOBE

クライアント:株式会社One Bright KOBE 様

  • 飲食店・食物飯店
  • 物販店
  • サービス空間・パブリック空間
  • デザイン・設計
  • 制作・施工
  • 内装監理
  • リーシング
  • にぎわいの創出
  • 地域の活性
  • 近畿

鼓動高まる、未来が動く。
アリーナ起点の地方創生。

Overview

阪神・淡路大震災から30年目の2025年、神戸の新たなランドマークとなる「GLION ARENA KOBE」が誕生した。場所は新港突堤西地区(第2突堤)、通称“TOTTEI”。270度を海に囲われた開放的なロケーションに、最大1万人収容のアリーナが威容を誇る。地元のバスケットボールチーム・神戸ストークスの本拠地として活用されるこのGLIONは、こけら落とし後すぐの試合でB2リーグとして過去最大動員数を達成。国内外の有名アーティストも続々と公演を決定しており、開業初月だけでもすでに25万人動員と好調な滑り出しだ。実はこのアリーナ、運営会社のOne Bright Kobe(以下OBK)も、デザイン・施工を担当したスペースも、共に“アリーナ未経験”の中でタッグを組んでようやく完成に至っている。一体どんな情熱と試行錯誤がプロジェクトを成功裡に導いたのか。地域の活性化、そして神戸の未来を見据えた、新アリーナ構想の舞台裏に迫る。

Index

スペースとOBK
アリーナ初挑戦同士のタッグ

髙 健太 / 営業

大田 寛章 / プロジェクトマネジメント

新アリーナ建設プロジェクトは、壮大な計画であったが故に関係人口も膨大だ。アリーナの建設及び所有は不動産デベロッパーのNTT都市開発、設計・施工は大林組、そして開業後の運営はOBK。スペースの関わりはというと、実は最初は入居するテナントの内装監理という局所的なものであった。

高:「最初は私が営業を掛けさせていただいたんです。神戸は大学時代を過ごした大好きな街。だからこそ、最近の神戸の人口減のニュースを耳にするたび、自分にも何かできることがないものかと考えていました。そんな時、新アリーナ建設の話を耳にし、ぜひ当社も何らかの形で力になれたらと積極的にアプローチしたんです」

髙 健太 / 営業

大田:「アリーナに携わるのは当社としても初めてで、私はそれだけでもワクワクしました。加えてOBKさんは復興や地域活性の文脈にこのアリーナを置いておられ、『アリーナをつくるのではなく、これからの神戸の街をつくるんだ』と。そのビジョンにも強く共感していました」

大田 寛章 / プロジェクトマネジメント

渋谷 樹 様 / 株式会社One Bright KOBE
ベニューマネジメントDivision Division Manager /
イベント統括Division Division Manager

日下部 音衣 様 / 株式会社One Bright KOBE
ベニューマネジメントDivision
サービス企画Group Team Leader

渋谷:「ありがとうございます。ただ我々は、ビジョンはあれど施設の建設や施工に関わった経験は一度もなく、A工事、B工事などの基本的な言葉も知らず……。そんな頼りないスタートを切った私たちに、スペースさんは親身に寄り添ってくれて、基本から手取り足取り教えてくれたんですよね。そしていざ内装監理をご一緒していくと、スペースさんの仕事におけるクオリティは前評判の通りでした」

渋谷 樹 様 / 株式会社One Bright KOBE
ベニューマネジメントDivision Division Manager /
イベント統括Division Division Manager

日下部:「特に『できること/できないこと』を明確に示してくれたのが助かりましたね。一度『できない』と言われたことも、私が『それでも、やっぱりやりたいんです』とご相談すると、『なぜしたいのか』を丁寧にヒアリングしてくれた上で『こうすればできるかも』と代案を出してくれて。誠実で柔軟な対応をいただくうちに信頼が重なり、気づけばあれも、これもとご依頼の範囲が増えていったんです」

日下部 音衣 様 / 株式会社One Bright KOBE
ベニューマネジメントDivision
サービス企画Group Team Leader

大田:「開業の約一年前に、急遽追加で“ホスピタリティエリア”と呼ばれる選手用ロッカールームや観客用のコートサイドクラブなども担当させていただけることになりました。いわばアリーナの中核エリアですから、あの時はスペース社内も相当沸き、中には『背伸びしすぎじゃないか?』という慎重な意見もあったくらいです。ただ、どんどん『面白い機会になりそうだ』と熱量が上がっていき、最終的には全事業部が横断的に関わる一大プロジェクトになりました」

ビートに乗って伝わっていく
「神戸らしさ」と高まる鼓動

渋谷:「我々が一貫してオーダーしていたのが、高揚感の中の『神戸らしさ』の表現です。 復興という文脈にも置かれる新アリーナですから、国内外の他のアリーナやボールパークの良いところを取り入れつつも、決して全てを真似せず、世界でここにしかない『神戸の』アリーナとして生み出したかった。それができて初めて、神戸の街を元気づけられるんじゃないかと。そんな我々の思いを汲んでご提案いただいたコンセプトだと思っています」

大田:「少し難しかったのが、『神戸らしさ』と言った時に、港町、船、異文化、海と山など、イメージするものは人それぞれなんですよね。こうしたモチーフももちろん要所要所で使いはしました。しかしそれ以上に大事にしたのは、神戸らしい『上質さ』、そして歴史の中で培われた『違ったものが混ざり合うという考え方』でした。たとえば異素材を組み合わせたり、全体をシックなデザインに仕上げる中でどこか一つ際立ったフォルムのものを置いたり。その全体から神戸を感じ取っていただけたらと」

一色 慎也 / 設計

一色:「神戸は山と海に挟まれた街であるといったことから、山や海を見ることで方角を認識するという文化があるんです。そこから着想を得て、多くのお客様が行き交う2階部は、南側に青いカラーを施しつつ、海に関連する素材を採用し、北側には山を彷彿とさせる緑のカラーをまとわせ、山にまつわる素材を取り入れました。一方、1階のコートサイドクラブにおいては、淡路瓦の製法を模したタイルなどこの地ならではの素材を使い、各所に神戸らしさを感じられる演出を施しています」

一色 慎也 / 設計

  • 観戦しながら飲食できるコートサイドクラブ。ロッカールームと試合会場とを結ぶ花道にあり、試合前後の選手を間近で応援することができる。
    またカウンターには御影石や淡路瓦の製法を模したタイルなど、地域性のある素材を使用している。

現場に常駐し 
コミュニケーションのハブとなる

実は、今回のプロジェクトは極めてタイトなスケジュールで進行していた。調整は膨大、だが復興30年目に合わせるためにも開業日の延期はできない。全員が一度は「無理ではないか」と思った現場で、それでも後悔を残さぬよう、最大のクオリティを求めてチームワークは加速した。

和田 拓 / 施工

和田:「工事中は私が現場に常駐していました。『大林組さんがつくる建物の中での内装工事である』という条件から様々な制約があり、大林組さんの求める水準も非常に高かったため、全てをクリアしながら納期に間に合わせるにはタイムリーな情報伝達と連携が命だったんです」

和田 拓 / 施工

日下部:「スペースさんとは最低でも週3でミーティングを続けていましたね。密な関係を築けたからこそ私もストレートに要望を伝えられるようになりましたし、また私たちが『完成後に何十年も運営をする』立場であることを汲んで、スペースさんは動線や使い方のアイデアも常に出し続けてくれました。『今から何かを変えたら、大変になるのはスペースさんの方なのに』、ですよ。後悔を残さないようとことん考えてくれる、その気概が本当にありがたかったです」

渋谷:「選手用ロッカールームのデザインは、日本では他に類を見ないほど素晴らしいと思っています。見栄えが良いだけでなく、バスケ選手の体格に合わせて全体の仕様が大きく、またエアコンの風が直接当たらなかったり、角を丸くしたデザインで怪我しにくかったりという細やかな心配りも。実はトップリーグの選手をリクルートするため、建設中からこのロッカールームまでお連れしていたのですが、皆さん口々に環境の良さを褒めてくださって。実際に移籍も進んでいます。今いる選手たちも、『この空間に相応しい選手にならないと』と襟を正しているようでした」

佐倉 太志朗 様 / 株式会社One Bright KOBE
ベニューマネジメントDivision
施設管理Group Group Leader

一色:「それは光栄な限りです。ロッカールームは最もこだわったところの一つで、全体を船室に、選手を船員に見立ててつくっています。照明は県鳥であるコウノトリ(英語でストークス)の巣をイメージしてクロスさせており、床には波模様が特徴的な卵の殻をつかって打ち寄せる勝利を表現しました。また試合前には闘志を高め、試合後はリラックスできるよう、照明の色温度を変えられるようにしてあります」

佐倉:「4階のVIPエリアは神戸らしいラグジュアリー要素とエンターテインメントが掛け合わさった象徴的な空間です」

佐倉 太志朗 様 / 株式会社One Bright KOBE
ベニューマネジメントDivision
施設管理Group Group Leader

和田:「VIPルームは目の肥えた方々に来ていただくので、施工には特にこだわりました。アリーナに面しており、客席からどう見えるか、VIPの目にどんな景色が映るか、幾度となく検討しました。クオリティの高い空間に仕上がったのではないかと思います」

子どもたちの描く未来が 
アリーナに混ざっていく

開業を目前に控えた2025年3月。スペースは神戸市内の子どもたちを巻き込み、ある企画を行った。それは幅約4m×高さ約1mの巨大なパネルに、子どもたちが「ミライのこうべ」を描くというイベントだった。

大田:「開業後に多くの人に来ていただくためにも、何か“コト”的なイベントを通してPRしたいと高と私が中心になって起案したんです。できれば最後に形に残るものをと考え、『みんなで絵を描く』に至りました」

佐倉:「企画のお話を受けたのは私だったのですが、もう即答で『ぜひやってください』と!」

高:「蓋を開ければ500人以上の方々がご来場くださいまして!当日はパネルに空と海と山だけ描いておいて、あとは自由に『ミライのこうべ』を描いてもらいました。名産の蛸があったり船や飛行機や花火があったり、賑やかで楽しい絵ですよね」

大田:「ポートタワーが3つもあるのはご愛嬌です(笑)。この絵はいま、アリーナのメインの入り口に近いカフェの壁に飾ってあります。ぜひ、描いた子どもたちにも見に来てもらいたいですね」

佐倉:「全体としては迫力や貫禄を強く感じるアリーナに、こうした手触り感のあるものが入るとほっこり感が生まれていいですね。カフェの雰囲気にもぴったりだと思います。何より未来の神戸の発展を願うアリーナに、実際にその未来を生きる子どもたちの絵が加わったことで、施設の意義もより深まった気がしています」

新アリーナ、いざ出航
目指すは神戸の輝く未来

2025年4月4日、GLION ARENA KOBEは待ちに待った開業を迎えた。神戸ストークスの試合には早速多数の観客が詰めかけ、4月20日にはついに1試合1万人を突破。これはB2リーグ史上最多記録である。

高:「開業日も開幕戦も、その後行われた音楽ライブもと個人的に毎週のように足を運んでおります。プロジェクトに関わった2年間は長いようで短く、膨大な数の関係者の調整やテナントのリーシングへの協力など大変なことも多くありました。でも全てがこの空間に無事帰結し、全てのテナントが埋まった形で開業できたことを思うと思わず目尻に滲むものがありました」

日下部:「私もです。本当にできたんだ……とゲートの前でしばし呆然とする心地でした」

渋谷:「バスケをする場所としては日本一だと自負しています!」

大田:「試合は凄まじい熱気ですよね。私たちも先日、新卒20人を連れて試合観戦に行ったんです。純粋に楽しかったですし、新人たちのモチベーションになったと思います。私はいつかスペースの社員数が一万人になったら、ここで総会をしようと夢見ています(笑)」

日下部:「オープンして数ヶ月、既にソフト面での課題がいくつか見つかっています。設備やファニチャーとの合わせ技で解決したい部分も多々ありますので、ぜひ今後もお知恵をお借りできれば幸いです。またアリーナのビジョンでもある『神戸の街全体の活性化』という意味では今からが本当のスタートです。目指すのは、GLION ARENA KOBEがあることで神戸に来る人が増えて、他の施設やエリアにも回遊いただいて、神戸の街の関係人口が増えていくこと。そこに到達するまでパートナーとして一緒に歩んでいただければと思います」

高:「私も同じ想いです。今後もこのアリーナを拠点としながら、神戸の開発という視座で協働していければ幸いです!」

  • アリーナ建設に協賛いただいた約90社の銘板。“民間民設”の夢を共に叶えてくれた感謝の気持ちを刻んだ。
    たくさんの人と企業の想いを乗せて、GLION ARENA KOBEは未来へと出航する。

Project Member

  • 大田 寛章大阪本部

    本プロジェクトにおける役割:
    プロジェクトマネジメント

  • 髙 健太大阪本部

    本プロジェクトにおける役割:
    営業

  • 一色 慎也大阪本部

    本プロジェクトにおける役割:
    設計

  • 和田 拓大阪本部

    本プロジェクトにおける役割:
    施工

業務範囲:ディレクション/デザイン/設計/制作・施工/内装監理/リーシング
※施工はロッカールーム/VIPエリア/一部テナント等

(※肩書きおよび所属は2025年6月時点のものです)