Sustainability Activities地域の歴史と文化を映し、想いをつなぐ公園を創出「Kakamigahara わたしのPARK」

プロジェクト概要
各務原市が「Park-PFI制度(公募設置管理制度)」を活用し、推進した公民連携事業。公募された前渡地区木曽川周辺整備事業(Kakamigahara わたしのPARK)の事業者として蔦井株式会社を代表とする各務原トライアングル共同企業体が担い、今後20年にわたり公園の維持管理を行う。スペースは共同企業体の構成企業として、公募への企画構想から参画し、設計・監理・サイン計画などを担当。
「各務原ならでは」をこだわり抜いた企画コンセプト
伊藤氏 もともとこの土地は、長らく使われていない国有地の河川敷だったのですが、地域の活性化のために何か活用できないかという声が以前から挙がっていました。各務原市らしい新しい使い方をいろいろ模索する中で、公園として整備する方針が固まったのは2014年のこと。そこから10年をかけてようやくオープンを迎え、地域の長年の夢を叶えることができました。
國松 今回のプロジェクトでは、「この土地らしさを公園空間にどう表現するか」を意識し、地域の歴史や文化を丁寧に掘り下げていきました。古い地図や文献を当たる中、この場所がかつて「前渡の渡し」と呼ばれる渡し場だったことがわかり、「渡し」と「私」をかけて「わたしのPARK」という名称をご提案しました。一人ひとりにとってお気に入りの場所になってほしい―そんな想いを込めています。
伊藤氏 行政としても、市の歴史を大切にしたいという気持ちは強くあり、土地の成り立ちを盛り込んでいただいたのはうれしい提案でした。工事中に実際に出てきた、かつて川の流れで丸まった石を公園内に配置するというのも、地域の記憶を再現する優れたアイデアだったと思います。
祖田 私たちに求められる役割は、地域ならではの特徴や良さを客観的な視点で見つめ直し、それを再発見して内外に伝える空間をつくることだと考えています。遊びの場にとどまらず、地域の魅力を発信できる公園にしたいという想いがありました。
服部氏 Park-PFIの枠組みでゼロから公園をつくるプロジェクトだったからこそ、社内でも「ワクワクするような企画コンセプトを提案したい」という声が強くありました。スペースさんに、いろいろな情報を精査し早期に「軸」を明確にしていただいたことが、成功につながったと感じています。
利用者の視点を空間づくりに反映
伊藤氏 計画段階では、前渡地区の小学校でワークショップを開催し、子どもたちから「どんな公園にしたいか」という意見を直接聞くことができました。そうした声を反映できたことは、地域に長く親しまれる公園を目指す上で、意義ある取り組みだったと思います。
祖田 各務原の特産品であるニンジンにちなんで、子どもたちがユニークな滑り台「ニンジンスライダー」を提案してくれたことが印象に残っています。それを受けて、芝生ひろばにゆるやかな勾配のリボンスライダーが誕生しました。滑り降りた先にニンジン色を取り入れたゴムマット舗装を設え、各務原らしさを感じてもらえるよう工夫しています。
服部氏 リボンスライダーは公園のシンボル的存在になっていて、子どもはもちろん、保護者の方々にも非常に好評ですね。その他全体のデザインや設計面では、私たちだけでは越えられない壁も多かったですが、スペースさんから色味を何パターンも提案いただけ、動線計画でも目線の高さを変えて立体的に示すなど配慮をいただき助けられました。
伊藤氏 スペースさんは商業施設を多く手掛けているからこそ、今のトレンドや利用者ニーズに敏感なのだと思います。利用者目線に立ったきめ細かな提案は行政の立場からは思いつかないことばかりでしたし、例えば商業施設並みにきれいなトイレは利用者からもとても好評です。
國松 「よく聞き、よく伝える」というのは当社の基本姿勢ですが、私自身、今回のプロジェクトではその大切さを実感しました。地域の想いやニーズに丁寧に耳を傾け、それをどう受け止め、どう形にしていくか。プロセスや提案の意図をきちんと共有することが、プロジェクトを円滑に進める上で欠かせない鍵になると感じています。
施設の完成が新たなスタートに
伊藤氏 BMXのような自転車に特化した施設は、各務原市として初めての取り組みで、正直なところ不安もありました。ですが、いざオープンしてみると、来園者の車のナンバープレートを見て、本当に広い地域から多くの方が足を運んでくださっていることを実感しています。今回の公園整備のテーマとしていた「多様な催しを通じて、地域を越えた人々の交流が生まれる場にする」が着実に形になってきています。
服部氏 まだまだスタートを切ったばかりですが、今後に向けて、まず何より地元に愛される公園であってほしいと考えています。地域の方々に「今年もこの季節には、『わたしのPARK』のあのイベントに参加しよう」と思ってもらえるような定番の催しを育てるべく、現在さまざまな企画を検討中です。
祖田 多くの施設づくりは、完成がゴールとして扱われがちですが、本当のスタートはむしろそこからです。この公園も、地域と共に第一歩を踏み出したばかり。当社としても設計会社という立場にとどまらず、公園運営の長い時間軸の中で、関わり続けられればと思っています。将来的には、イベントの企画や提案などにより主体的なかたちで参画し、新たな役割を果たしていきたいというのが今の目標です。
※本ページに記載の部署・役職は原則として取材時点のものです。