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代表取締役社長 庄村 香史

 

Q. スペースはどのような会社であり続けたいですか?

A. 関わる人たちがよりいっそう「ファン」になれる会社を目指します。

2026年1月、株式会社スペースの代表取締役社長に就任いたしました。

振り返ると、私がスペースに入社してから30年以上が経ちます。よく覚えているのは、入社10年目ごろに、当時の本部長と話をしたときのこと。ちょうど、幹部社員としての自覚が少しずつ芽生えてきたころで、思い切って「建築分野への進出についてどうお考えですか」と尋ねてみたのです。「余計なことを言うな」と一蹴されるかとも思ったのですが、しばらく話を聞いてくれた後、「その考えをずっと持っておけよ」とだけ言って立ち去られました。

ほんの数分のちょっとした会話でしたが、自分なりにスペースがもっと発展するためにはと考えたことを受け止めてくれる上司がいるんだ、と強く印象に残った出来事でした。私がスペースという会社に改めて惚れ込んだ、いわば「ファン」になった瞬間だったのかもしれません。

その後も、「こんなことをやりたい」と言えば、上司からはたいてい「好きにやれ」と言ってもらえました。もちろん、その分の責任は生じるのですが、自由に動けるように十分なサポートはしてくれる。従業員の挑戦を後押しする、こうした企業風土がとても魅力的に感じられました。社長という立場になった今、それをしっかりと継承していく責任を感じています。

そして、スペースで働く皆さんに、この会社の「ファン」になってもらうことが、社長としての目標の一つです。そしてその先にあるのは、スペースで働く人たちを通じて、私たちと関わるお客様やパートナー企業、地域の皆様にも「スペースのファン」になっていただくことです。

働く一人ひとりがいきいきと挑戦し続ける姿そのものが、空間の価値や信頼につながり、結果として皆様から選ばれる。そうした会社であり続けたいと考えています。

Q. これからの成長環境をどう見ていますか?

A. あらゆる挑戦が可能なシームレスな時代です。

この数年あまりを振り返ると、2020年からは新型コロナウイルス感染症の拡大で、世界的に足踏みの状況が続きました。不安や焦りがなかったわけではありませんが、結果的には、自分たちが何を強みにしているのか、どこで価値を発揮できるのかを見つめ直す貴重な時期になったと捉えています。

その後、ここ数年は市場の活況が続いていますが、この状況がいつまでも続くとは考えていません。「拡大成長」を掲げた2026年12月期からの新中期経営計画のスタートにあたり、いい意味での緊張感を持って挑む必要があると考えています。中計策定の議論の中で、2040年時点の売上高1,000億円を重要な到達点として設定しましたが、その実現に向けて必要になるのは、挑戦の積み重ねです。

私たちはもともと商業施設の空間づくりを生業とし、その領域で多くの経験を積んできました。一方で、オフィスやホテル、公共分野といった領域については、それぞれに専門の担い手がいる、餅は餅屋だ、とどこか線を引いて捉えていました。しかし実際に取り組んでみると、特にコロナ禍以降は空間領域ごとの垣根や民間と行政の間の壁が低くなり、空間づくりの世界がシームレスになってきたと実感するようになりました。自分たちの領域ではない、経験がないから難しいとためらう必要がなくなり、フィールドは大きく広がっていると感じています。たとえば、地方自治体をクライアントとする案件に私たちが深く関わらせていただくことも、最近では珍しくなくなってきました。

自分たちを枠にはめてしまうことなく、スペースでやる意味を見つめながら挑戦することで、もっとワクワクする仕事や、新しい可能性が生まれてくるはずです。シームレスな時代を楽しみながら、可能性を広げていきたいと思っています。

Q. 新中期経営計画の中心に据えたものは何ですか?

A. 社員一人ひとりが個を磨き成長することです。

こうした事業環境の中で、引き続き重要なテーマだと考えているのが「地域コミュニティーへの貢献」です。地域に向き合えば、そこに分かりやすく大きな利益が生まれる──そうしたケースばかりではありません。むしろ課題はありながらも、事業として成立しにくいのが実情だと感じています。

では取り組む意味がないかというと、そうは考えていません。私たちは、東京一極集中ではなく全国に本部を設け人員を配置し、地域に根差した事業を長年行ってきました。そうした体制の中で培ってきた知見やネットワーク、柔軟さを組み合わせることで、他社にはないかたちで地域課題に向き合える可能性があります。私たちの強みを生かすことで、課題解決そのものが独自の付加価値となって、事業としての継続性や企業価値につながっていくと考えています。それもただつくって終わりではなく、地域の皆様とも深い関係性を築きながら、10年後、20年後も人が住み続けられる地域を生み出すことを目指していきます。

それを実現していくためには、私たちがもっと進化することが必要だと感じています。可能性の広がりを実感する一方で、まだまだ自分たちの力が十分とはいえないことや、新たに求められる体制づくりが必要といった課題も多く見えてきているのが現状です。

そこで、今回の中計スタートにあたっては、自らの成長のためにチャレンジしたいと考える社員を、会社として徹底的にバックアップするというメッセージを明確に打ち出すことにしました。中計期間が終わる3年後、今よりも一段高い場所に立てている状態を目指し、「個人を磨く」ことを中計の中心軸に据えて取り組んでいこうと考えています。

その上で、中計の目標の一つに「全社員総合職の実現」を掲げました。ここでの総合職とは、各自が専門性を持ちながらも自分の領域に線を引かず、空間づくりのはじめから終わりまでを理解し、全体の最適解を考えられる人を意味しています。ただ与えられた仕事を言われた通りにこなすのではなく、相手は何を期待しているのか、どうすればその期待を超えられるのかを自ら考え、行動する姿勢を全社員に持ってほしい。それによって、クライアントの皆様にもスペースのファンになっていただき、「スペースと仕事をしたい」と感じていただける関係を築くことを、一人ひとりに期待しています。

Q. 価値創造の出発点は何ですか?

A. 「人」を中心に据えたマテリアリティです。

サステナビリティの面においては、「地域コミュニティーへの貢献」のほか、「安全・安心な空間づくり」「環境負荷の低減」など7つのマテリアリティを設定しています。今回、新中計を策定するにあたって、経営戦略とマテリアリティとのつながりをより意識しています。

ここまでお話した通り、「地域コミュニティーへの貢献」は、当社の強みと強く結びつく重要なテーマです。地域の課題解決には、パートナー企業との共創が欠かせません。パートナー企業の高齢化や職人の不足といった課題が顕在化する中で、若い世代の育成に向け、ものづくりの価値をしっかりと発信していかなくてはなりません。同時に、「取引先」ではなく「パートナー企業」としてお互いを尊重し、信頼関係を積み重ねていくことが何よりも重要だと認識しています。

また、とりわけ重視しているのが価値を生み出す源泉である「人」に関連する部分です。たとえば、「多様性の尊重」や「人材開発と働きがいのある職場づくり」といったマテリアリティでは、異なる個性を持つ一人ひとりが能力を発揮できることを重視しています。人の成長そのものが価値創造の出発点であり、その積み重ねが新たな価値を生み持続的な事業の成長につながっていく──これが当社の考え方です。

Q. なぜ成長を「螺旋」で表したのですか?

A. 原点を大切にしながら広がる成長だからです。

今回の中計では、「世の中を、希望にあふれた空間にする。」というVISIONの達成に向けた当社グループの軌跡を、遠心力によって外へ広がっていく「螺旋」の形で表しました。この螺旋的な成長を支えるのが、総務、人事、財務などのいわゆるバックオフィスです。

営業やものづくりだけではなく、バックオフィスの存在がなければ、安定的な拡大成長は実現できません。その重要性を改めて認識し、社員自身の自覚を促す意味も込め、バックオフィスの呼称を「コアオフィス」に変更。中計の戦略の一つに「コアオフィスの進化」を掲げました。

また、いくつもの同心円を描く螺旋の形は、循環を象徴するものでもあります。今回の中計は、「原点回帰」を掲げた2017年から積み重ねてきた12年間の最終ステージです。しかしこれで終わりではなく、この先も、再び原点に立ち返ることが必要になるときがくるでしょう。

これまで成長というと階段を上がるような二次元的な見方で捉えがちでしたが、螺旋はそれを三次元で捉えるものです。横から見れば上へ上へのぼっていきますが、真上から見れば軸を中心に循環している。視点を変えることで、成長の積み重ねを実感すると同時に、自分たちの現在地を確認することができます。私たちの原点を忘れずに、しかし着実に成長し続ける。そんな思いを「螺旋」に込めました。

そして、私たちにとっての「拡大成長」とは、売上や利益などの数字だけが伸びることを意味するものではありません。むしろ、何よりも重視すべきは「人の成長」だと考えています。一人ひとりがその力を伸ばしながら、知見や経験を共有して、組織としても成長していく。多様な能力や個性を持った人が、それぞれに活躍できるフィールドを構築していく。それが、もっとも大切なことだと思うのです。

利益や株価をはじめとする財務上の指標が、企業にとって重要なものであることは言うまでもありません。しかし、それだけを追い求めるのでは意味がない。私たちの仕事は、商空間の創造を通じて、豊かな社会の実現に貢献すること。一人ひとりの成長と、それを通じた社会への貢献という視点を、常に持ち続けていたいと考えています。