Info当社デザイナーが語る、デザインの本質

2026.04.28
  • ニュースリリース

 

JAPAN SHOP2026にて、日本商環境デザイン協会(JCD)ブースで実施された「未来をひらくクリエイター30人展/U45」に、当社名古屋本部クリエイティブ事業部の町田幹樹と大阪本部SD部の橋爪宏輔が参加し、トークイベントに登壇しました。

 

既存資源の再解釈というアプローチ

橋爪は冒頭、「目下のテーマは既存資源の再解釈。」と切り出し、歴史や文化、希少な素材と技能を掛け合わせた、いずれも高級料理店の「鮨ひじり」「野口」を挙げ、自身のデザイン観を語りました。

自身のデザイン観を解説する橋爪

 

光と影が織りなす舞台空間

鮨ひじりは、店名の「聖(ひじり)」が、徳高く神のような存在を意味することから、光と影を引き立たせる空間づくりを志向。2025年開業のグラングリーン大阪内、約21坪という限られたスペースで、どのような世界観を演出するかが課題でした。

そこで導き出した答えは「舞台」――。
食材を主役に、料理人を演者に見立て、空間全体で一つの物語を演出しています。
舞台の背景には、伝統技法を持つ職人手製の和紙を採用。天板には銘木を用いるなど、細部まで本物にこだわりました。橋爪は「本物で構成されたシンプルな空間で、職人が料理を仕立てるドラマ。唯一無二の特別な空間を組み立てた」と振り返ります。

 

伝統と商業空間の融合

日本料理を振る舞う「野口」においても、オーナーの想いから、本物志向を追求。「相互借景をコンセプトに、京都の数寄屋の要素を商業施設に取り入れた」と解説しました。枯山水を彷彿とさせる内庭には、京都の庭園で選定した鞍馬石を配し、室内にいながらも自然を感じられる構成に。
さらに、天板には数千年以上もの間、地中に眠っていた神代欅を採用し、料理の魅力を引き立たせています。

最後に「過去から受け継がれてきた文化や希少な素材を、現代にどう落とし込むかが肝だった。昔の思想や考え方を聞きながらのものづくりは深く、貴重な経験になった」と語りました。

 

万人に伝わるデザインの重要性

明確な来店動機を持った顧客がターゲットの店舗とは対象的に、町田は不特定多数の来館者に訴求するための、“人を選ばないデザイン”の在り方を紹介しました。
「子どもから年配の方まで、皆に愛される空間には、わかりやすさが不可欠」とし、明確さを重視する姿勢を語りました。かつての上司に叩き込まれたというその視点が、今の町田のデザイン観を作っているといいます。

人を選ばないデザインについて語る町田

 

象徴を拡張するデザイン

イオンモールNagoya Noritake Garden内の「回転焼肉 一升びん」では、焼肉の象徴である「焼き網」を主軸に空間を構築。
ファサードの下がり壁も、軽量ボードに替わって焼き網を使用し、店名から着想を得た杉玉も網で表現するなど、象徴的な要素をスケールアウト。壁面を赤で統一することで、“焼肉感”を視覚化しました。「わかりやすさの追求は、面白さにつながる」といいます。

 

空間で伝える“カレーうどんらしさ”

イオンモールナゴヤドーム前店のカレーうどん専門店「若鯱家」においても、同じく老若男女に通じるデザインに重きを置き、うどんのコシや躍動感を空間で表現。木格子の先端にうどんのハネを取り入れ、白い天井とカレー色の壁面の色彩で、スパイスからカレーへの変化を演出しました。
町田の演出による“わかりやすさ”は、すべてが一つの線でつながっています。店舗を正面から望むと、先端がハネる“うどんの格子”がカレーに浸かっているかのように見えます。「通りかかるすべての方に“カレーうどんらしさ”を無意識的に感じてほしい」と語ります。

 

地域に寄り添う空間づくり

最後に紹介されたのは、福井駅隣接の観光案内所。
自身ゆかりの福井県において、観光交流センター内に観光案内所が整備される話を聞きつけ、役所を中心に情報を集め、やがてプロポーザルに参加したといいます。
「幸福なふるさとを感じさせる空間」をコンセプトに、福井県の幸福度を高めている象徴として家族や住まいの温かさをデザインに反映しました。床・壁・天井には手を加えていけないという制約の中でも、デザインの体現と体験価値を高めるため、柱においては、ボールベアリングを施した什器をまとわせ、回転式で選ぶ楽しみを持つパンフレットラックとするなど、各所に工夫を施したといいます。

そして、「楽しみの先にこそ、おもしろいお店や施設が成り立つ。お客様も職人も、そして我々自身も、皆が笑い合いながら携われる、そんなものづくりをこれからも続けていきたい」と締めくくりました。

 

特定の来店客に向け、唯一無二の体験を突き詰める橋爪のデザイン。
一方で、あらゆる人に直感的に伝わる価値を追求する町田のデザイン。

対照的でありながらも、その根底には「空間の可能性を追求する。」という当社のMISSIONが息づきます。
本質を見極め、文脈を読み解き、空間に落とし込む。
その積み重ねこそが、人の感情を動かし、記憶に残る体験を生み出していきます。
当社はこれからも、時代や地域、そしてお客様一人ひとりの想いと向き合いながら、訪れるすべての方の記憶に深く刻まれる場を追求し続けてまいります。

(書き手・広報部 前田健斗)

 

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