Story名鉄グループ ラグジュアリーバス「LUVIA」

クライアント:名鉄グループバスホールディングス株式会社 様

  • サービス空間・パブリック空間
  • 企画・プロデュース
  • デザイン・設計
  • 制作・施工

唯一無二のくつろぎで、
旅路をつなぐ。

広々としたバスの車内に、たった18席の贅沢。目的地から目的地へ、旅路を優雅につなぐラグジュアリーバス「LUVIA」は、名鉄グループバスホールディングス(以下、MGBH)が2026年に立ち上げた高付加価値バスツアー専用の特別仕様車両である。そのデザインや内装の一部造作を手掛けたのが、今回モビリティデザイン初挑戦となったスペース。初挑戦だからこそ、既成概念にとらわれない発想を期待されての指名だった。アイデア出しから制作に至るまで、組織や立場を超えて一丸となって進められたプロジェクトは、同業者らも「見たことがない」と驚く上質なバス空間として結実。催行開始3か月ですでにリピーターを獲得するほどの人気コンテンツとなっている。

Point

  1. 01 モビリティデザイン未経験の
    スペース起用で新発想を実現
  2. 02 現場・現物を見ながら
    ワンチームで制作推進
  3. 03 利用者満足度の高い仕上がりと
    制作者たちの大きな達成感

Project Member

PROFILE

  • Takayuki Ban

    伴 孝幸様

    名鉄グループバスホールディングス
    経営企画部部長
    特命担当

  • Kenichi Kondo

    近藤 賢一様

    名鉄グループバスホールディングス
    経営企画部課長 総務人事担当
    兼 営業戦略担当

  • Yuka Kimura

    木村 ユカ

    株式会社スペース
    名古屋本部
    クリエイティブ事業部 企画デザイン部
    部長 シニアデザイナー

  • Hiroshi Momono

    百野 寛史

    株式会社スペース
    名古屋本部
    名古屋第2事業部・営業4部・1課
    課長

Chapter 01

既成概念にとらわれない、
唯一無二の
ラグジュアリーバスを。

ラグジュアリーバス「LUVIA」は、MGBH肝入りの事業である。コロナ禍による観光需要の減退から回復し、バス事業としての新たな一手を模索していた同社。目をつけたのが、富裕層やシニア層を中心に人気が高まっているラグジュアリーバスツアーだった。

近藤

ある日突然社長室に呼ばれて、「バスつくるぞ!」と言われまして(笑)。そのまま私がツアーの企画や広報まで一連の業務を担当することになったのですが、肝心の車両製作は私自身も未経験。ベテランの伴部長と共にプロジェクトを推進することになりました。

伴

名古屋では初のラグジュアリーバスとはいえ、全国的に見れば後発の取り組み。どうせならば絶対に他社の真似にならないもの、一番いいものをと思っていました。そこでお声がけしたのがスペースさんです。スペースさんには2年前にも名古屋中央営業所の内装を依頼しており、そのとき、仕上がりの満足度もさることながら、コミュニケーションが非常に取りやすいことが印象的でした。スペースさんはモビリティ未経験とのことでしたが、その方がむしろ、私たちが思い付かないような切り口や、最初から「できない」と思い込んでいたようなアイデアを出していただけるのではという大きな期待から始まりました。

木村

実は、最初は「モビリティは専門性が高すぎるからお断りしよう」と思っていたんです。でも、そんな風に期待をかけていただいて嬉しくないわけがありません。伴さんたちの熱意に押されるままに、「まずはデザインから挑戦してみよう」と思い、そこからどんどん深く踏み込むことになっていきました。

名鉄バスの運転手が、運行管理や車両メンテナンス、休憩、仮眠のために利用する名古屋中央営業所。スペースは主に共用部分の内装設計・造作施工を担い、リラックスしながらも自然と交流が生まれる空間を創出した。

Chapter 02

目指したのは、
長時間
心地よくくつろげる空間。

デザインの方向性が決まるまで、デザイナーの木村は毎回の打ち合わせに3案ずつデザインを持参した。バスとしての常識や実現可能性は一旦考えない、完全なるフリーデザイン。それをMGBHの名鉄バス、岐阜乗合自動車、名鉄観光バスが連携して精査し、議論する。方向性は次第に絞られ、“本物”を意味する「オーセンティック」というコンセプトに固まっていった。

木村

通常の案件では3案ずつお持ちするようなことはあまりなく、プロとして「これだ」と思う珠玉の1案をご提案します。しかし、今回は私も初めてのモビリティデザイン。いわば1年生として、チームメンバーの知恵を大いに借りながらゼロベースで試行錯誤する時間が必要でした。

伴

最初はモダンなデザインの大きなペンダント風照明をつけるような案もあり、面白いなと思いましたよ。ただ、木村さんと実際に他社のラグジュアリーバスを視察するなかで、「自分たちが求めているのは、ガチャガチャ、ギラギラした方向性の“豪華”じゃなく、お客様が長時間過ごしてもリラックスできる空間なんだよな」ということが明確になっていきました。

木村

さらに、三菱ふそうバス製造さんまで見学に連れていっていただいて骨組み状態のバスを見せていただいたのも大きかったです。構造がわかると、「この空間を最大限活かすデザイン」のイメージも湧きますから。

伴

「バスのここってどうなっているんですか?」と、木村さんたちがあまりにも根掘り葉掘り聞くので、もう見せに行ったほうが早いと思ったんですよ(笑)。そうやってたくさんのものを知るうちに、コンセプトを体現するには、「素材の良さを生かした天然木を使うのがいいのではないか」という方向が見えてきましたね。

近藤

天然木の持つ温かみや優しい風合いは、「本当に上質な空間を」「本物のラグジュアリーを」という、まさに弊社の意向を体現するものでした。「オーセンティック」というコンセプトもたくさんのアイデアの中から皆で決めたからこそ納得感が強く、決定後はそこ目掛けて一気に進んでいった気がします。

Chapter 03

制作現場まで
お客様をお連れし、
モノを見ながら
共に品質を高めていく。

天井のデザインが優れていると、その下に広がる空間はいつも気持ちよく美しく整うのだと木村は語る。「LUVIA」の天井デザインもまさにそうした思想から生まれた。最大限高く、広々と美しく。しかしこれを実現するにはさまざまな立場からの調整と協力、そしてデザインから制作まで一貫して担えるスペースならではの体制が必要不可欠だった。

伴

高く開放感のある木の天井を実現するには、空調を別の場所にどかしたり、車体重量が法規制をオーバーしないようにしたりと各社と調整しておく必要がありました。図面を見せると皆最初は渋い顔をするんです、かなり調整が面倒だから(笑)。でも長い付き合いの方が多く、意見の衝突はありながらも最後は落とし所を見つけて協力していただけました。

実際の制作が始まると、営業の百野は伴氏や近藤氏をご案内する形でスペースの自社工場である犬山工場を訪れた。制作中の天井を見てもらうためだ。

百野

自社のことで恐縮ですが、犬山工場のメンバーはとても熱意があって責任感が強く、プライドを持って仕事をしている人たちだと常々感じていて。皆さんにもぜひお会いしていただきたかったんです。

近藤

犬山工場の見学はとても価値のある体験でした。丁寧に妥協なくものづくりに取り組んでくれていることがわかりました。

伴

しかも犬山工場の方々に「天井を一回組み立ててみてもらえますか」とお願いすると、すぐに床で仮組みをしてくれて。完成イメージが湧きましたし、「図面で想像していたのと違う」なんてこともなく。このズレのなさは、デザインから制作まで一社で一貫しているからだと思います。

愛知県犬山市にあるスペースの自社工場。天井の造作や品質を確認し、車体に組み付ける工事のイメージも皆で共有した。

Chapter 04

同業者から、
「この発想はなかった!」

モビリティとして非常に珍しい、左右非対称の外装デザイン。余計なものを取り払った美しい木製天井と、それを柔らかく照らす温かな間接照明。大局から細部までこだわり抜いたデザインと内装は、完成後、業界関係者からも驚きを持って迎えられた。

モビリティとしては異色の左右非対称のデザイン。車体左側には日本アルプスの稜線が、右側には伊勢湾・三河湾から望む海の景色がグラフィックで表現されている。また車体リア部には、7つのバス事業会社からなるMGBHが一体となる姿を象徴的に表現。山の稜線と海の波が交じり合うかのような演出で、複数の会社が一つのブランドとして未来へ進んでいく姿を描いた。

伴

個人的に最もこだわったのが照明でした。温かい空間にしたいと思ったので柔らかい照明を選び、それを天井に沿って伸びるように配置しました。木製天井との組み合わせも素敵な仕上がりで、視察に来る同業者からも「この発想はなかった」と驚かれることが多いです。

近藤

照明、いいですよね。夜やトンネルの中に入ると天井に向かってほのかに灯って。光が車内に広がるドラマチックな雰囲気を気に入っています。

木村

調光や回路分けも細かく調整しましたね。お手元周りのコンソール※を作る専門の会社さんとも何度も打ち合わせし、細部まで仕様を作り込みました。やはり手元の細かいところまで満足できる設えになっていないと、ホスピタリティが行き届きませんから。

百野

バスというのはお客様が同じ場所に長時間とどまる空間ですので、細部まで目が届きますし、使い勝手もダイレクトに表れます。私もちょっとした寸法や収まりにも細心の注意を払いました。私にとっては自分史上最も限られた空間での内装作りでした。

※座席周辺に設置される、電源、収納、各種スイッチ、ドリンクホルダー、スリッパ置き場など

乗ってすぐに惹きつけられる、高さのある木製天井と間接照明。木の温もりと両サイドのアールが、柔らかく落ち着いた空間を演出する。また、天井をスッキリと見せるため、LUVIAの車内には網棚がない。代わりに荷室内に木製ロッカーを設置し、重い荷物や旅先で購入したお土産物などはこちらに一人ずつ仕舞えるようにした。(ロッカーはスペースの自社工場で制作)

Chapter 05

「また乗りたい」
「また作りたい」が、
次の挑戦を連れてくる。

2026年4月、「LUVIA」は名鉄観光バスが贈るラグジュアリーバスツアー「遊山」のお客様を乗せて走り出した。評判は上々。開始から3か月ですでにリピーターが現れるほどの人気ぶりだ。

近藤

バス旅行にもともと馴染みがあった方だけでなく、鉄道など別の選択肢で今まで旅行されてきた方にも気に入っていただきたいという想いがありました。その狙い通り、さまざまな方にご利用いただき、「落ち着くね、こういうバス旅もいいね」というお声を多数いただいています。

伴

今回の製造に関わってくれたすべての事業者さんが、自社のウェブサイトに「LUVIA」を制作実績として掲載してくれているんです。それだけ出来が良かったと思ってくださっているのだと思います。「面白い仕事でした。次にやるならまた声をかけてくださいよ」という意欲的な声もたくさんいただいています。

百野

それは嬉しいですね!ぜひ、またこのチームで新しいことに挑戦しましょう。

木村

今回、私たちとして初めてのモビリティ分野のプロデュースにも関わらず、こんなにも魅力的なバスを実現させられたのは、皆さんの多大なるご協力あってこそです。

伴

最初の「完全に自由な」アイデア出しからスタートし、本当に唯一無二のバスを作り切ることができたのはスペースさんのおかげです。これからも、既成概念にとらわれない空間づくりに、共にチャレンジさせてください!

当時を振り返るスペースのプロジェクトメンバー

Project Member

  • Yuka Kimura

    木村 ユカ

    株式会社スペース
    名古屋本部
    クリエイティブ事業部 企画デザイン部
    部長 シニアデザイナー

    役割:企画・デザイン・設計

  • Hiroshi Momono

    百野 寛史

    株式会社スペース
    名古屋本部
    名古屋第2事業部・営業4部・1課
    課長

    役割:営業・制作・実施設計

業務範囲:企画 / ディレクション / デザイン / 設計 / 制作・施工 / ブランディング

(※肩書きおよび所属は2026年9月時点のものです)