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代表取締役社長 佐々木 靖浩

「進化発展」の最終年度に

「有終完美」。これは、私の今年の書き初めの言葉です。2025年度は、2023年度にスタートした中期経営計画「進化発展」の最終年度となる年。中計で掲げた4つの目標を確実に達成し、この3か年をしっかりと締めくくろうという決意を込めました。

4つの目標のうち、「営業利益率5%」「売上高成長率5%」は順調に進捗しています。残りの2つ、「顧客提供価値の向上」「全社員活躍の実現」に向けても、さまざまな取り組みを進めてきました。

サステナビリティを通じた「顧客提供価値の向上」に向けた取り組みの一つが、スペース流の「捨てない空間づくり」への挑戦です。サステナブル素材の使用は、通常の製品よりもコストがかかる場合もあります。それでも自信を持ってお客様に提案できるようになってきたのは、社員の理解が深まったからこそ。併せて、お客様のサステナビリティへの意識の高まりも強く感じています。

地域活性に関わる案件についても、順調にその数を伸ばしています。ある自治体から観光案内所の新設案件のご依頼をいただいたのですが、そのきっかけは、以前に別の自治体で当社が担当した観光案内所の案件を評価いただいたことでした。一つひとつの案件で社員の経験値が上がり、行政との協働ノウハウが蓄積されて、さらに次の案件の確度が上がっていく。順調に案件を増やせたことで、ますます当社の強みとして確立され、地域活性と事業としての成長を一気に加速させていけることを期待しています。

また、「全社員活躍の実現」に向けた制度改革もこの数年で時間をかけて進めてきました。残業なしの「セミスタンダード」、1日6~7時間勤務の「ショートタイム」、週に3日20時間から働ける「スーパーショートタイム」、在宅勤務の枠を広げた「フルリモート」など、個々の事情に合わせたワークスタイルを選択できるようにしています。それによって、多様な働き方を実現し、一人ひとりのパフォーマンスも高まって、会社としてより良いものを生み出すことにつながっていくと考えています。社員に新たな制度を浸透させ、それぞれが自分で考えてより効率的な働き方を選択できるようにしていくとともに、効果を測りながらさらなる制度の充実を図っていくつもりです。これまでになかった試みも取り入れ、次の世代が働きやすい環境をつくっていくことが、私の重要な役割だと認識しています。

一方で2024年度は、当社の元契約社員が過去の在職期間中に、監理技術者の資格者証偽造を行っていたという、あってはならない事態が発覚しました。すでに所轄庁への報告などの対応は終えていますが、事態を厳粛に受け止め、今後同様のことが起こらないよう管理体制・社員教育をいっそう強化する考えです。

また、持続的な調達を維持していくことも大きな課題の一つです。今、当社がお付き合いさせていただいているパートナー企業の中にも、経営難や後継者不足などで廃業を検討されている職人の方がいると聞いています。私たちが、事業継続のサポートや、技術の継承、次世代の職人の育成などに何らかのかたちで携われないかといったことも考えていく必要があるでしょう。パートナー企業の皆さんにもしっかりと利益を出していただき、互いにWin-Winの関係を築くことが、両者がサステナブルな経営を目指す上で大前提になります。

「本物」を見分ける目を持つ

創業100周年を迎える2048年までに売上高1,000億円を達成するんだと、社員によく話しています。現状で600億円を超え、まもなく700億円も見えてくるという段階ですが、この先さらに300億円を積み上げるには、ただ現状の事業を拡大し続けるだけではなく、新しい挑戦が必要になるでしょう。

企画からデザイン・設計、施工まで、全行程を一人の社員もしくはチームが一貫して担う体制になっていること。それを通じて、全社員がしっかりとビジネス感覚を持っていること。各地域に拠点を置き、地域に根差したビジネスを展開していること。こうしたスペースの強みは生かしながらも、現状の事業の枠にとどまらないオンリーワンのビジネスを構築していかなくてはならないと思うのです。

そのためには、壁を打ち破るブレイクスルーが絶対に必要です。スペースの独自性や強みといった変えてはならないものはしっかりと守りながら、ただ前例踏襲で変えてこなかったことについては、どんどん見直し、ときには壊す勇気を持ちたい。実験的なスモールスタートでも、まずはやってみようという考えです。

変えるべきは変え、変えてはいけないものは引き継いでいく。それを見極める上でも実行する上でも大事にしたいのが、「本物」であるかどうかです。私は、サステナブルであるためには「本物」でなくてはならないと考えています。

これは、私が昔から好きなファッションの世界の中で強く感じたことでもあります。ただ高級なものが「本物」なのではありません。たとえば、伝統と技術に裏打ちされているということ。ものの本質を突いているということ。オンラインではなく直接顔を合わせて話をするということも、ある意味で「本物」だといえるでしょう。偽物 はどんなに見栄えが良くてもすぐに廃れていってしまう、残るのはやはりそうした「本物」だけだと思うのです。

「本物」かどうか、それはいかにこだわりを持ってやりきるかということでもあります。自分の中にこだわりを持つことを、スペースで働く上での大事な価値観として若い社員に伝えていきたいと考えています。もちろん、一言で語れることではありませんから時間はかかりますが、入社して最初の数年でしっかりとその価値観を、そして私たちのビジネスの本質を伝えることができれば、その人はしっかりとスペースの未来を担っていってくれるでしょう。幹がぶれずにしっかりとしてさえいれば、スペースのDNAはいつまでも引き継がれていくと思うのです。

100周年のその先に向けて

私たちが見据えているのは、100周年を迎える2048年のさらにその先です。私たちが将来にわたりビジネスを継続していくためには何が必要なのか。サステナビリティを改めて問い直したときに、100周年を迎えたときにどんな会社でありたいのかを考え、そこから「今、何をすべきなのか」をバックキャストで考えていく必要性を感じています。

2021年に、サステナビリティ基本方針と、「地域コミュニティーへの貢献」「環境負荷の低減」など7つの重要課題を策定しました。今見返しても、この7つは例外なく大変重要な課題だと感じます。人材の多様性など、より重要度が明確になったものもあります。7つのテーマそれぞれであるべき姿を見据えながら、サステナビリティ実現への道のりをしっかりと進んでいくつもりです。

自分たちの強みを最大限に生かしながら、ブレイクスルーを起こしてありたい姿へと近づいていく──。その私たちの歩みに、ぜひ注目いただければと願っております。