Sustainability Dialogue経営陣座談会
2024年度実施東京、名古屋、大阪、福岡に本部を置くスペース。
それぞれの拠点はどのような特色や強みを備えているのか、
そしてその強みを生かして、社会にどのような価値を提供していこうとしているのか。
サステナビリティの重要性が増す今、変革を起こすために
必要なことについて、各本部長が語り合いました。

森田 昭一
取締役常務執行役員
大阪本部長
大橋 一之
執行役員
東京本部長
庄村 香史
取締役専務執行役員
営業統括本部長
山口 弘晃
名古屋本部長
澤 匠
福岡本部長
それぞれのエリアの特色を生かして
それぞれの担当エリアの特色は何ですか
澤福岡はアジアの玄関口といわれる通り、アジア各国から観光で来られる方が非常に多いです。その中で、天神をはじめとする市街地が非常に活性化しています。またお客様からは「地域の中でつくり上げていこう」という気質を強く感じます。交通や電気、ガスなど、地域のインフラ事業者のお客様とも距離が近く、長くお付き合いをしながら一緒に新しいものを生み出すようなことはやりやすいと感じています。

山口名古屋はスペース創業の地で、その流れをくんでいるのが最大の特色です。商業施設はもちろん、企業プロモーションや医療、教育の分野など、商業系以外の事業も幅広く手掛けています。愛知はものづくり王国といわれる場所ですから、自動車産業を筆頭とする製造業のお客様との関係づくりにも注力していきたいと考えています。また、オリジナリティーを出すために建築から手掛けるなど、新しいことに挑戦しているのも特徴だと思います。
大橋私は2023年度から東京本部を担当していますが、やはり日本全国から人や情報が集まる場所だと感じています。お客様も、東京に拠点を置きつつ全国、あるいは世界で活動している大企業が多い。さまざまな動きが全国で最初に起こる街だけに、その中でどうお客様のニーズを見定めていけるかが重要になります。また、札幌・仙台・沖縄の3つの地方事務所も東京本部の管轄なのですが、事務所の社員が直接現地のお客様と話ができる体制です。それぞれの地域で特色の異なるマーケットが形成されているので、そこでの情報を得られるのは非常に有効だと感じています。
森田それと比較すると大阪はやはり「地域密着」という雰囲気が強く、総合デベロッパーよりも、地域に根ざした電鉄系デベロッパーなどとのお付き合いが中心です。また、全国的には撤退するケースも増えているGMS(総合スーパー)も、関西エリアでは地域密着型の商業インフラとして機能している。そうしたお客様としっかり縁をつなぎながら、地域の生活を豊かにできる場所の創造が活動の軸になっています。
同時に、地域と全国を結びつけながら課題解決にあたり、お客様の全国展開を総合的にサポートしていくのも、大阪本部の役割だと考えています。
庄村各本部の規模は約50人~250人とさまざまですが、どこも同じように裁量が与えられているのが当社の特色で、各本部長が小さな会社のトップのような存在になっています。本社に確認をしたり、応援を出してもらったりしないと動けないのではなく、各本部で課題解決を実現できる体制をとっている。どの本部も同列に裁量を持って活動しています。
創立からの75年、各地のお客様とのご縁を大事にしてきたことが当社の事業領域を広げてきたと思いますし、今はその広がった領域を各地域で深掘りしていくフェーズに入っているのではないかと感じています。

スペースの強みとは何か
地域を越えてスペースに共通する強みについてはどう考えていますか
森田一人の社員が最初のヒアリングや企画提案から引き渡しまで一貫してサポートできることが、これまで積み重ねてきたスペースの強みだと思います。最近は案件の規模も拡大しチームでの一貫対応が増えていますが、いずれにせよ一つの窓口ですべてのプロセスに対応できる点は、お客様からも高く評価いただいています。
中期経営計画でも掲げている地域活性化においては、商業系ではないお客様とお付き合いする機会が多くなります。商業に慣れていないお客様には特に、その強みに価値を感じていただけていると感じます。例えば廃校になった校舎の再生プロジェクトを手掛けたのですが、私たちの幅広い対応力が生きる場面が多くありました。今後、同じようなケースにおいて、私たちが果たせる役割は大きいのではないでしょうか。

大橋中期経営計画では「一人ひとりが経営者意識を持って行動する」を方針の一つとしています。お客様のニーズに対し、適切なサービスを考え、価格を決めてビジネスをしていく、それを社員一人ひとりがやります。その積み上げが今のスペースの強みになっていると考えていますし、私たちにとっては当たり前のことでもあります。その「当たり前」をどう届けて、お客様に価値を認めていただけるようにするかが今後の課題でもあるのかなと考えています。
山口各本部に裁量権があり、多様な人員がいるという点も当社の一つの強みです。プロジェクトを推進する場合に、各本部単体で推進体制を組んでいるので、あるプロジェクトでは、お客様から「他社のように、そのプロジェクトのときだけ東京本社からメンバーが集まるのではなく、地元にいる人たちでチームを組んで対応してくれるのは安心できる」と、お言葉を頂いたこともありました。
澤エリアの特性を読み解き、お客様のニーズをきめ細かく把握しようとするマインドは、どんな業務を担当している社員であってもしっかりと根付いています。また、自分の業務にはまらない部分も含めて自由に越境して行動できる力があるように思います。ただ空間をデザインするだけではなく、そこから一歩踏み出していこうとする、それによってお客様と一緒に成長しようとするマインドこそが、当社の強みではないでしょうか。

お客様に提供すべき価値とは
強みを生かして、今後中長期的にお客様にどういう価値を提供していきたいですか
大橋人が直接集まることが難しかったコロナ禍を経験し、人が集まれるリアルな空間の重要性が改めて注目されるようになりました。もちろん一方で、インターネットを利用したECサイト店舗なども定着しています。そうした状況の中で、これまでとはお客様が求めるものも大きく変わってきています。例えば、「場の価値」というものを改めて認識されて、売り場面積を広げて売り上げをつくろうということだけではなく、地域コミュニティーの拠点となる場づくりを大事にされるお客様もいらっしゃいます。そうした変化に柔軟に対応して場の在り方そのものを提案していくことが必要になると考えています。

山口これはどの業界でもそうだと思うのですが、お客様のお話を聞いていて実感するのはやはり人手不足です。チャンスがあっても、人手が足りず出店できないという話をよく聞くようになりました。そうした状況下では、デジタルの活用やオペレーションの構築など、無人店舗や最低限の人で成り立つ店づくりが、今後求められるようになるのではないかと考えています。
澤九州エリアでは近年、海外の企業の進出が急速に進んでいます。今はまだ、海外からの訪問者が増えたといっても観光客が中心ですが、今後は全国的にも、日本で働き長期的に暮らす人が増えていくのではないでしょうか。どんな空間をつくるときにも、グローバルな視点で多様性を意識することが求められるようになります。街づくりの在り方にも変化が生まれると思うので、それに伴う需要にどう対応していけるかを考えたいですね。
森田中長期的に見れば、世の中全体の大きな流れとして、サステナビリティや非財務的な価値がいっそう重視されるようになっていくことは間違いありません。お客様の短期的なニーズに対応しつつも、まだ見えていない中長期的な課題を見つけ出し、提案していくことも重要になってくるのではないでしょうか。
私たちが取り組む地域活性化についても、似通ったショッピングモールをつくるのではなく、よりローカライズされた価値を付加していく。例えばモールの一角に地域住民の交流を生み出せる場を用意するようなことも、考えていく必要があるのではないかと思います。もともと当社が扱うのは商業空間の中でも、生活に密着した施設が中心で、いわば「生活」を常に意識しているお客様と関わり続けてきました。地域活性化についても、生活文化の創造や利便性の向上を総合的にプロデュースできるようにしていくことが、私たちの価値向上につながります。商業と生活の両軸で中長期的な提供価値を高めていきたいと考えています。
庄村いずれも社会構造の変化にどう対応していくかという話だと思います。その点で一つ進めたいのは、「捨てない空間づくり」です。すでに業界内では非常に重要視されている考え方ですが、今後お客様からも求められる価値になっていくだろうと思います。
「捨てない」といってまず思い浮かぶのはリサイクルですが、産業廃棄物のリサイクルはすでにもう高い比率で進んでいる。当社が担う「捨てない空間づくり」は、その一歩先のものであるべきだと思います。例えば、取り壊した店舗のものを次の店舗でも使える仕組みをつくることができれば、お客様は投資を抑制できますし、私たちは2店舗目の受注につながるわけです。そうしたWin-Winな「捨てない空間づくり」を具体的に提案できれば、直接のお客様以外のステークホルダーへのアプローチにもなり、私たちの企業価値はさらに高まるのではないかと思います。今まさに社内でも、社会的課題にどう対応していくかという議論を進めていますし、期待の持てる部分ではないでしょうか。



「笑顔で一歩を踏み出せる」会社
今後スペースをどんな会社にしていきたいですか
澤お客様の要望に応えていくだけではなく、自分たちで一歩先を創造して、そこにお客様に乗ってもらえるようなやり方を目指すべきなのではないかと思います。
山口これまで築いてきた歴史を尊重し、つないでいくことはもちろん大前提です。その上で、世の中の流れに即して、環境の変化に対応しながら新たな取り組みをしていかなくては生き残れないし、自分自身もその視点を持ちながら行動していきたいと考えています。

大橋先ほども「人手不足」という話が出ましたが、全国どこでも人手が足りないといわれている。ということは、見方を変えれば仕事がたくさんあるということです。「人が生み出す価値」を提供している私たちとしては、むしろチャンスだともいえる。「人」の質をさらに向上させながら、この「人手不足」の環境をうまく使って事業拡大を目指せればと考えています。
森田「人」という話とつながるのですが、最近考えているのは企業風土、企業文化の醸成はとても大事だということです。企業風土や文化は過去から受け継がれてきたものですが、何もしなくても成り立つものではなくて、放っておけば薄まり、消えていってしまう。やはり言葉を掲げるだけではなく、仕事を通じて普段から伝えていくことが重要です。
今、スペースは「明日が、笑顔になる空間を。」というSLOGANを掲げていて、ようやく社員の間でもそれに対する本質的な理解が広まってきたところだと思います。さらにその理解を深めていくための活動は今後も必要だし、自分たちが何を目指すのかという思いを改めて共有していきます。
庄村今年、入社式で新入社員に向けて話したのは、「社員みんなが笑顔で一歩を踏み出せる会社にしよう」、ということです。持続可能な社会をつくり、その中で企業として存続していくために、重要なのはやはり「人」。だからずっと、その「人」が「笑顔の一歩」を踏み出せる会社であり続けたいと思います。

- 本ページに記載の部署・役職は原則としてダイアログ実施時点のものです。