Sustainability Activities素材から物語を紡ぐ——シニアデザイナー木村ユカが語る空間づくり

2025年12月、ホテルインディゴ犬山有楽苑にて、当社名古屋本部のシニアデザイナー・木村ユカが、アイカ工業株式会社様の関係者に向けて、「デザイナーの仕事」をテーマに講演しました。アイカの名古屋ショールームの設計を担当したご縁から、これまでの取り組みを評価いただき、今回の講演依頼につながりました。
素材を“選ぶ”のではなく、“読み解く”という考え方
冒頭、木村は「見た目を整えることだけがデザインではない」と語り始めました。
ブランドの背景、顧客の心理、それぞれの空間に求められる役割——。
それらを丁寧に読み解き、その場所にストーリーを宿す行為こそがデザインであると強調します。
そこで欠かせないのが“素材の選定”。
機能性や質感に加え、光の当たり方ひとつで表情が変わる点を重視し、実験と検証を繰り返していると紹介しました。
さらに、審美歯科「ホワイトエッセンス」やタオル専門店「エアーかおる東京丸 エムズ南青山」などの事例をもとに、素材が持つ力をいかに“体験価値”へと転換しているかを解説。
小さな素材の“触り心地”から、空間全体の“感覚”へとストーリーが紡がれていくことを示しました。
そのうえで、文化財の再生や地域プロジェクトなど、多様な取り組みから「デザインで社会に貢献する姿勢」を伝えました。
現場が語りかける“素材のリアル”
会場となった「ホテルインディゴ犬山有楽苑」は、1965年開業の旧犬山ホテル跡地に建てられました。
犬山市の歴史や文化が建築・内装に反映され、まさにこの地のストーリーを語るデザインです。
アイカの製品も随所に使われており、講演後には、ホテル内を巡りながら意見を交換しました。
施設管理部長の中川恵介さんからは、かっこいいデザインでも、運用面を考慮しなければ、長期的に価値を保てないという指摘がありました。
これは木村が語る「見た目を整えることだけがデザインではない」に通ずる内容で、デザインの意図と運用面での現実、その双方を併せ持つことの重要性をあらためて感じさせられます。
“推し事”というデザインの姿勢
講演の最後に木村は、「デザインの目的は、空間づくりを通じてお客様のビジネスを成功に導くこと」だと、にこやかな表情で話します。
その目的達成に向けたキーワードは“推し事”。
ここでいう推し事とは、単なる仕事ではなく、お客様のビジネスそのものを“好きになる”姿勢のことだと言います。
好きだからこそ深く知りたくなり、もっと良くしたいと思える。
その想いが、デザインという手段を通してお客様を支えることへとつながり、次なる価値を生むと強調しました。
素材の選択や手法は、目的達成に向けた大切な手段の一つです。
それを生かしつつ、体験や価値、そしてお客様の未来を見つめ続けることこそ、空間デザインの本質であることをあらためて感じさせられる機会となりました。
(書き手・広報部 市川美希)