Sustainability Activities道の駅若狭おばま

道の駅から小浜市全体を活性化するためのトータルプロデュース
福井県小浜市は里山や海などの自然や寺社仏閣、伝統行事や魅力的な食文化がある街です。しかし、既存の道の駅ではその魅力を十分に伝えられていませんでした。そこで小浜の魅力を観光客だけでなく地域住民にも再発見してもらうための場としての道の駅のリニューアルが計画され、スペースは道の駅から地域全体を活性化させる「道の駅若狭おばまプロジェクト」に参画しました。
当プロジェクトは、既存の建築をつなぎ、施設を一体化するという大掛かりな計画で、基本構想から約2年半の期間をかけて進められました。
スペースは物販施設、情報館、レストラン、ランドスケープ、サイン計画など、道の駅のトータルプロデュースに関わり、道の駅の課題を解決しつつ、小浜市全体の魅力が伝わる施設づくりに取り組みました。
地域の魅力を発信し、地域住民と観光客の接点を生み出すコミュニティーづくり
リニューアル前の道の駅は、観光客向けの施設で、地域住民からの「道の駅で地元農産物を購入したい」「ゆっくり店内で過ごしたい」といったニーズに応えられていませんでした。そこで、観光客だけでなく地域住民にとっても利用価値のある機能を付加し、小浜の魅力を再認識できるよう企画しました。地域住民自身が小浜市のファンとして施設を利用し、自分事となって地域の魅力を情報発信することで、道の駅がより賑わうだけでなく、観光客を市内周遊へと誘導するきっかけの場になると考えたのです。
そこで、この道の駅が小浜市の玄関口として情報発信拠点となるよう設計提案を行いました。物販エリア・情報エリア・レストランの3つのエリアを連動させ、新たな情報と出会い、体験できるつくりに。それぞれのエリアにはシンボルとなる造形を配置し、市内観光地や地元産業の映像を流すことにより、作り手と観光客を結び、エリアを回遊することで小浜の多くの魅力に触れるきっかけを生み出します。
海のイメージが強い小浜市にあって、湧き水や農産物といった地域住民が慣れ親しんだ里の魅力にも着眼し、「水」をキーワードに施設をデザイン。サイン計画に関しては青色の濃淡で水の流れをイメージして施設に近づくにつれブルーが薄くなる構成とし、水が流れるようにお客様を誘導する仕掛けにしました。水の流れから派生したロゴデザインは、海、里、まち、食、寺社のイメージを組み合わせた形をしており、小浜の5つの魅力が「水」によってつながり、道の駅に集まっているという意味を持たせました。
小浜の隠れた魅力を発信する空間
小浜市では新鮮な海産物を食べる場所はあるものの、農産物を観光客向けにアピールできる場所が少ないという課題もありました。質の良い湧き水が出る小浜市では、地域住民の中にはその湧き水を汲んで生活に利用している方もいます。その水で育てられた農作物は小浜の隠れた魅力の一つでもありました。道の駅若狭おばま内にある食品加工施設を地元の農作物を中心としたレストランへ改修する計画において、小浜の食の魅力を伝える空間づくりから、ローカルな温かさを生む仕掛けやオペレーションまで提案しました。
訪れた人が里山の空気感を感じられるよう、野菜と親和性の高い「土」をキーマテリアルに、空間の随所に土壁やレンガの意匠を取り入れました。食材にこだわった料理を楽しめるプリフィックスビュッフェ形式とし、さらに、テイクアウトカウンターも設置してドライブ観光を目的とした利用者に対して市内周遊へと促す仕掛けとしました。
観光客だけではなく地域住民の利用も促し、「御食国おばま」としての食の魅力を発信することで、地域のさらなる価値向上を目指しました。
MESSAGE
このプロジェクトで当社は、食材加工室をレストランへ改修するための設計・施工業務(一部)、物販施設と情報施設を一体とする増築および改修工事の企画・設計・施工業務(一部)、ランドスケープの改修計画業務を担当しました。
プロジェクトに取り掛かる前に小浜市内のあらゆる場所を実際に体験し感じた、「地域の魅力や特産品などを外に向け発信したい」「地域住民がこの地域の素晴らしさを再認識できる場所にしたい」という想いを強く持って取り組みました。改装後、空間のデザインも評判が良く、施設の従業員が自信を持って自主的に働ける道の駅になったことで、売上も上がり、良い相乗効果が生まれています。
本プロジェクトによって、道の駅が地域コミュニティーの拠点となり、従業員、地域住民、観光客が笑顔で活気あふれ、この魅力が地域全体に波及してほしいです。また、小浜市が進める道の駅、海の駅、まちの駅が連携し観光客の回遊を生み出す3駅連携にも寄与し、小浜市全体の発展に貢献できれば嬉しいです。