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伝統工芸でひらく、
新しい京都の玄関口。

京都駅前地下街ポルタ

クライアント:京都ステーションセンター株式会社 様

2018年3月にリニューアルオープンを迎えた京都駅前地下街ポルタ(以下、京都ポルタ)の『東エリア』。3箇所の階段で地上と繋がり、JR京都駅や地下鉄にも直結する、非常にアクセスに恵まれた場所である。しかし、以前の『東エリア』は老朽化が進んだ施設だった。その打開策として考えたのが、京都の伝統的な風情を有しながら、新たなお客様も呼び込めるような新鮮味ある場所にすることだった。

『京都らしさ』と『日常性』で
地下街にもっと賑わいを

押川 正大 様 /京都ステーションセンター株式会社
代表取締役社長

押川:「リニューアルにあたり市場調査をしたところ、今後増加する2つのニーズが明らかになったんです。1つは、インバウンド。そして、もう1つは、京都周辺にお住まいの方による普段使いのニーズでした。これらのお客様に来ていただくためには、どんな施設にリニューアルすればよいか。考えていく中でふと思ったのは、京都は歴史や文化などの古いものを大切にしながらも、それらを追いかけるだけでなく時代の『先端』をつくってきた、ということです。ですから今回のリニューアルでも、ベースは京都の文化や歴史にしつつ、新しいチャレンジをしたいと思いました」

押川 正大 様 /京都ステーションセンター株式会社
代表取締役社長

インバウンドのお客様の期待にも応えられる京都らしさを大切にしつつ、日常的に利用してくださるお客様を増やしていきたい。そこから、『京都暮らし』というリニューアルコンセプトが生まれた。

大藪 由紀夫/商環境研究所
取締役所長

大藪:「環境デザインのポイントは東エリアにある2箇所の広場のあり方でした。広場はエリアの外の通りからもよく見える場所にあるので、東エリア全体の印象と流れを大きく変える重要な要素です。また、京都らしさをどう表現するのか、ということがデザインの一番の課題でもありました。それぞれの広場の中央に柱があるのですが、それを表装的な意匠と素材で組み立てて京都を表現するのではなく、象徴的なモニュメントにしたいと考えました」

そして最終的にたどり着いたのが『和傘』のモニュメントだった。和傘は京都の『風情』と『日常性』を連想させる。2箇所の広場に『ハレの蛇の目傘』と『ケの番傘』を対のコンセプトとして表現することで、特別な付加価値を創造したい、という考えだった。

大藪 由紀夫/商環境研究所
取締役所長

伝統工芸の和傘職人とつくる、
『ここにしかない』空間

西堀 耕太郎 氏 /株式会社日吉屋
代表取締役 統括本部長

京都ステーションセンターとスペースの両社でディスカッションをしていく中ではっきりしたことは、『本物にこだわろう』ということだった。

押川:「さりげなさや上品さが京都らしさだと思いますので、いかにも京都を感じてくださいね、という押し付けがましいものや、偽物にはしたくないと思っていました。京都の風情を、本物で表現したい。和傘についても『ここにしかないもの』、そして『ここにマッチするもの』にしたいと考えたんです」

西堀 耕太郎 氏 /株式会社日吉屋
代表取締役 統括本部長

そこでスペースは、広場の主役となる和傘のモニュメントの制作を、京和傘専門店『日吉屋』に依頼。日吉屋は、江戸時代の創業から百数十年以上にわたって伝統工芸である和傘を作り続けてきた専門店で、今回のような商業施設の内装に携わるのは初めてだった。

西堀:「お話をいただいて、喜んでお受けしましたが、内容的には非常にハードルが高いと感じました。お客様に喜んでいただくには、ただ伝統を発信するのではなく、今の京都のお客様に合ったかたちで発信していく必要があります。さらに、つくったものはきっと何十年も残り続ける。ですから、東京でいうところの渋谷駅のハチ公像のような、象徴的なものにしたいと考えました。一生に一度あるかないかの大きな仕事となりました」

徹底的に本物にこだわるということで、和傘には本物の竹や和紙を使用することになった。商業施設では、防災上の理由で可燃物を内装に使うことが法律上制限されていたが、「何としてもこのアイディアを実現させたい」と施主である京都ステーションセンターのメンバー自らが許可を得るために奔走。スペースとともに試行錯誤を重ねた結果、『和傘にガラスケースを被せる』という条件で行政から許可を得ることができた。

知恵と技術を結集させ、
ディテールまでこだわり抜く

西堀:「和傘は通常、1本の竹を割ってつくるのですが、今回は床から天井に達する大きさの和傘です。いつも仕入れている竹では到底無理なので、大きさに見合った竹探しからのスタートでした。蛇の目傘に使う糸飾りは、京都市内の伝統ある組紐屋さんにお願いしました。材料1つひとつに、京都の色々な工芸や伝統が集結しています。ご協力いただいた職人さんたちも、皆喜んでくださっています」

こだわりがディテールに及んだのは、和傘だけではなかった。共用通路は、門前町の風情をイメージしており、ファサードには、京格子窓をイメージしたデザインを施した。さらに、サインや照明計画も、導線や集客を意識して綿密に設計された。

澤本 三恵/商環境研究所

上野 太凡/商環境研究所

澤本:「入り口の環境意匠とサインの角度にもこだわりました。サインを含めて全体的に角度を持たせた空間デザインは、西エリアや地下広場からも見えやすくなり、立ち寄っていただきやすくなりました。『人の流れを変える』という課題に対する解決もできたと思います」

澤本 三恵/商環境研究所

上野:「照明は、全体的に明るく照らすのではなく、強弱のメリハリをつけることを意識しました。全体的には以前より暗くなっている印象があるかもしれませんが、光溜まりを演出することで、より店舗が浮き上がって見えるようにしました。広場では、四季折々の映像投影や、時を刻む光の演出も行っています」

数々のこだわりを実現させながら、オープン日に向けて、施工は急ピッチで進められた。和傘のモニュメントに関しては初めての試みも多く、作業は難航することもあった。

上野 太凡/商環境研究所

西堀:「実際に現場に行ってみると、想定していたサイズ感と違うなどの問題もありましたが、現場の皆さんで意見を出し合い、試行錯誤しながら進めました。スペースの方々からも、施工についてのアイディアをいただくなどお世話になりました。私のところから若い職人たちが6人ほど来ていたこともあり、なんだか合宿のような雰囲気でした。手でモノをつくることは素晴らしいことだなと改めて感じられた、本当に楽しい時間でした」

そしてついに、工事が完了。完成した様子を見た、『東エリア』周辺の店舗のオーナーの方々からは、驚きの声が上がった。

押川:「私たちとしては、想像を超える素晴らしいものになったと思っていましたが、肝心なのはお客様の反応です。でも、オープン前の内覧会で、オーナーの皆さんが目を輝かせながら驚いている姿を見て、これは成功したんじゃないか、と思いました」

京都の新しい伝統を、
発信していく場所として

山信 敏雄 様
京都ステーションセンター株式会社
取締役 営業推進部長

リニューアルオープン後、明らかに東エリア周辺の人の流れに変化が表れた。外国人観光客の姿が目に見えて増え、通勤や通学のついでに立ち寄るお客様も増え続けている。人の流れに比例するように売上も好調で、オープンから数ヶ月が過ぎても高い水準を維持し続けている。さらに、効果はそれだけではなかった。

押川:「ある和菓子のテナントさんが、『環境も変わったことだし』と新商品をつくるようになったんです。既にロングセラー商品をお持ちの老舗さんなので、以前は新商品の開発にあまり積極的ではなかったのですが。今では他のお店とコラボして新商品を作って、話題になりテレビにまで取り上げられています」

山信:「フィナンシェの販売をスタートした和菓子のお店もあります。今まではお土産用の商品を中心に扱っていたお店が、普段使いのお客様のために『自分へのご褒美用』の商品を売るようになった、という変化もありました。リニューアルをしていなかったらこんな動きもなかったのでは、と思います」

山信 敏雄 様
京都ステーションセンター株式会社
取締役 営業推進部長

西堀:「生まれた瞬間から伝統たるものはないということを考えると、伝統とはいわば革新の連続とも言えます。今ある老舗や伝統文化も、新しい試みをして、それが世の中から受け入れられてきたからこそ、長く続いている。だから、この場所から和菓子と漬物がコラボしてもいいし、職人同士が繋がって化学変化が起きるのもいい。こういうことが、『やっぱり京都って古いだけじゃなくて、新しいことも次々とやっている』というメッセージになっていくのではないかと思います」

押川:「京都ポルタがこの京都の駅前という場所でどうあるべきか。これから、どんどん時代は移り変わっていくと思いますが、京都の玄関口として『京都らしさ』を発信していくことはもちろんのこと、チャレンジを大切に、次々と新しい文化を発信していく。京都ポルタは、そんな場所でありつづけたい。そう思っています」

Project Member

業務範囲:環境設計 / 施工 / 内装監理

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