Storyノースポート・モール

クライアント:東急不動産株式会社 様

  • 複合商業施設
  • デザイン・設計
  • 制作・施工
  • 内装監理
  • リーシング
  • 関東

暮らしの笑顔を育む、
まいにちが明るくなる場づくり。

Overview

横浜・港北ニュータウン。ファミリー層が多く住むこの街は、ニュータウンという名前の通り、比較的新しく、都心のベッドタウンとして発展してきた。この街の暮らしを支える中核施設として位置づけられるのが、ノースポート・モール。地下2階、地上7階、全9層にも及ぶ巨大なショッピングセンターとして2007年に開業した施設である。街に親しまれてきたこの商業施設に、開業以来の大規模リニューアルの計画が持ち上がり2015年秋にコンペが実施された。コンペの課題として設定されていたのは、施設環境の経年劣化、各フロアや施設全体の回遊性の悪さ、物件全体の暗さの改善など。だが、スペース社内にてプロジェクトの課題整理を進めたところ、最大の改善ポイントは、多層階ショッピングセンターであるにも関わらず、各フロアがどこも同じような見え方であるということがわかってきた。各ゾーン特性に見合った「場所性」が希薄であるがゆえに、回遊性を阻害していた。この部分にメスを入れ、すべてを刷新するのではなく、既存の良さを活かしながら、施設全体のグランドデザインをリノベーション手法によって、新たな価値創造を図った。

Index

新しいライフスタイルが、
生まれる街を目指して

中野 香菜/設計

田中 三弘/設計

中野:「最初に提示を求められたのは、吹き抜け部分のパースのみ。けれども、私たちは求められたものだけではなく、あるべき姿を組み立て、提案をしました。駅前にある地域に密着した施設なので、全館リニューアルだからといってガラっと違う施設に変えることなく、今住んでいる人を思い描き、その人たちの笑顔の場を想像するところから始めていきました」

スペースはプロジェクトのコンセプト軸を明快にしていくために、エリアマーケットの基礎データを踏まえて、ペルソナをつくり出していった。平均的なアプローチは避け、誰に向けての開発であるかを焙り出し、コンセプトの具体性をさらに深掘した。

畠山:「このエリアは、年収の高い世帯が多い。だからといって、教育費や住宅ローンにお金が必要になる年代なので、年収の割に可処分所得はそんなに多くない。これは実際に、このエリアに住んでいる社内のメンバー数名にヒアリングしたからこそ分かったことです」

中野 香菜/設計

大切なのは、その場所に本当にマッチするものをつくること、その場所の潜在的なニーズを顕在化しピントをあわせ、次の土壌をつくることなのだと、畠山は続ける。

畠山:「もっとハイグレードに振ることもできるし、そういう設計の方が、つくり手の実績にはなるでしょう。けれども、生活者が本当の意味での喜びに繋がること、その場でしか出来ないことを創造するために、奇をてらわず、ちょっといいな、という線を狙ったのです」

地域の人々のマインドをヒントに、最終的にスペースがまとめあげたのは、今ある躯体形状を最大限に活かした提案だった。

田中 三弘/設計

田中:「コンペには複数社が参加していました。他社の提案は、いずれも建築躯体自体に手を加える内容だったとお聞きしています。私たちは、今ある躯体形状を活かしながら、利用者の方が変化を感じやすいところに注力しようと、リノベーション手法を駆使する案をご提案して、結果的にその案を採用していただきました」

田中によれば、コンセプトを決めることが、設計者のやるべき重要な仕事なのだという。スペースが提案したリニューアルコンセプトは、「港北New lifestyle town」だった。

畠山:「ノースポート・モールは、この街で暮らす人々の笑顔が生まれる場所。この場所をきっかけに、家族や友人と集える新たな場と生活シーンが生まれ、暮らしの楽しみ方が変わって、今日より明日、もっといい1日が過ごせるように。そんな願いが込められています」

シーンを思い描くところから、
空間が生まれていく

以前のノースポート・モールは、コーナーやフロアに個性がなく、施設全体でどの場所にいるかが、分かりにくくなっていた。そこで、スペースが力を入れたのが、コーナーやフロアごとの特色を活かし、それぞれの場所にふさわしいシーンを思い描くことだった。フードコートでは家族が団らんしながら食事をするシーン、ファッションのフロアでは、カップルが会話を楽しみながらショッピングをするシーン。各コーナーやフロア、それぞれのシーンを創造し、それぞれの場の特徴をつないでいくことで、楽しく巡れる商空間が生まれていく。

見せ場の一つでもあるエントランスをはじめ、2Fフロア全体の設計を担当した佐伯は、こう振り返る。

佐伯:「施設規模に対し、小さく暗かったエントランス空間を、お客様が足を踏み入れた瞬間に、外の気分から華やかなショッピング空間へとスイッチング出来る場面として設定し、ノースポート・モールの新たなウエルカムゾーンづくりを目指しました」

買い物客の年齢層は、非常に幅広い。小さなお子さん連れのお母さん、年配の方、高校生や大学生など、さまざまな年代のお客様を、どう誘導していくか。スペースは、サイン計画にも力を入れた。

佐伯:「エレベーターはどこにあるか、トイレはどこにあるか、すぐに分かるように、サインをより見やすくするための工夫を随所に凝らしています」

西部 圭一/施工

居相 裕二/施工

ビス1本残さない。
緊張感が、安心を生む

設計のアイデアを形にするには、施工の技量が試される。施工現場においても、たくさんのドラマがあった。「お客様とも、一冊の本になりますね、なんて冗談を言っていたんですよ」と、現場を率いた西部は笑う。施工できるのは、営業が終わってから翌朝の営業開始まで。つまり毎朝、引き渡しの瞬間が訪れる。

西部 圭一/施工

居相:「翌朝からまた営業が始まりますから、ビス1本残さない、作業の仕舞いまで責任を持って、常に緊張感を持って施工を進めました。毎日が、事故を起こさないように、というプレッシャーとの戦いでしたね」

居相 裕二/施工

西部:「何よりも一番気をつけていたのは安全施工。工事の安全もそうですが、オープンしてからも安全に利用していただくための施工です。ファミリー層が多いので、小さなお子さんもいらっしゃる。ご家族で楽しく過ごしていただく場所で、怪我なんて絶対におこしてはいけないので」

オールスペースだから成し得たこと

今回のプロジェクトは、スペースの各部門がリーシング、企画設計、施工、内装監理と総合的に携わる、オールスペースで取り組んだプロジェクトでもある。久保によると、リーシングには、スペースならではの特色があるという。

久保:「リーシングを行う開発のチームは、東京、名古屋、大阪、福岡に拠点を置く横軸の組織。全国の商業施設や専門店との繋がりがあり、情報を一元管理しているので、地域に限らず、全国に渡って情報提供ができるんです」

久保 隆幸/リーシング支援

ノースポート・モールにおいても、スペースの情報網を活かして、奈良に本社を置く飲食店の出店の橋渡しをした。

久保:「先方が、ちょうど出店したい立地、狙いたい客層だったこともあり、ご出店が決まりました。オープン後にお話を聞いたところ、売り上げも好調とのことで、嬉しい限りですね」

オールスペースで取り組んだことで、コミュニケーションの密度も格段にあがった。こまめな情報共有をしたことで、結果的に仕事の質も向上し、お客様の満足度にも繋がったという。

今 俊也/内装監理

西部:「現場では、日々色々なことが起きます。心がけていたのは、社内で密に情報共有をして、スペースとしての答えをすぐ出すこと。オールスペースだからこそ、できたことだと思います」

今:「同じスペース同士だからこそ、ディベロッパーが片方に言えば、もう片方にも話が伝わる。施工のことで内装監理の私に電話が来たり、設計のことで施工に電話がいったり。情報共有を細かくできたことは、大きかったと思いますね。横の繋がりで、ちょっとした問題は解決できる。お客様にとっては、調整事項の少なさがメリットに感じていただけたのではないかと思います」

安田 鉄平/プロジェクトマネジメント

営業として、クライアント、パートナー企業、ゼネコン、弊社各部署と連携しながらスケジュールやコストの調整に奔走した安田は、こう続ける。

安田:「プロジェクト全体を俯瞰し、スケジュール管理と実施推進を行う司令塔のような役割が、顧客にとって最も重要な役割であり、その価値を生み出すために粉骨砕身の覚悟で挑みました。実際に施工も担当する私たちだからできることですし、このバランス感がプロジェクト推進を支える要になれたと思います。また、オールスペースで取り組むことで、スケジュールやデザイン、そしてコストも、最終的にうまくバランスを取ることができた。もしそれぞれが違う会社であれば、自分たちの主張ばかりになってしまうかもしれない。オールスペースだからこそ、お客様のためを一番に考えて動くことができたのだと思います」

  • 久保 隆幸/リーシング支援

  • 今 俊也/内装監理

  • 安田 鉄平/プロジェクトマネジメント

この街で暮らす人々の笑顔が
生まれる場所であり続ける

2017年9月。ノースポート・モールは無事に、リニューアルオープンの日を迎えた。当日の様子を、田中はこう述懐する。

田中:「入り口に立っていましたが、『わーすごい!変わった!』と子供たちが嬉しそうに走っていく様子を見て、感動しました。オープンの初日は、1000人近い行列ができましたが、それだけ地元の人々から楽しみにしていただいていたのだと思うと感無量でした」

中野:「キッズゾーンを担当していたのですが、オープン後に見に行ったら、たくさんのご家族で賑わっていました。もともとベビーカーを押しているお母さんの多い施設だったのですが、そういった方々のニーズにしっかりと応えることができたという実感が湧いて、本当に嬉しかったです」

港北ニュータウンの中心エリア、連日家族連れで賑わうこの場所は、「港北New lifestyle town」のコンセプトの通り、装い新たに生まれ変わった。この場所が、これからもずっと、この街で暮らす人々のための場所であるために。新しいライフスタイルが生まれる場所として、今日より明日がもっといい1日になる場所として、ノースポート・モールはこの街の笑顔を育む場であり続けるだろう。

Movie

Project Member

  • プロジェクトマネジメント

    安田鉄平 / 東京本部

  • 設計ディレクション

    畠山啓 / 商環境研究所

  • 設計

    田中三弘 /商環境研究所

  • 設計

    中野香菜 /商環境研究所

  • 設計

    佐伯洋 /商環境研究所

  • 施工

    西部圭一 /東京本部

  • 施工

    居相裕二 /東京本部

  • 内装監理

    今 俊也 / 内装監理本部

  • リーシング支援

    久保隆幸 / 開発本部

業務範囲:設計 / 施工 / サイン計画 / 内装監理 / リーシング支援

(※肩書きおよび所属は2018年6月時点のものです)